憲法改正の危機の中で、 子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう

By | 2016年8月18日

         憲法改正の危機の中で、子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう
                     ―日本国憲法公布70年に、歴教協からの呼びかけ― 

 
     7月10日のはじめて18選挙権が実現した参議院選挙の結果は、改憲勢力が3分の2以
上の議席を得ました。しかし、憲法改正に反対する市民と4野党の共闘の力は発揮さ
れ、11の1人区で議席を得ました。沖縄・福島では、現職大臣が落選しました。
  とくに沖縄では、「オール沖縄」の候補が、沖縄・北方担当大臣に10万票以上の差
をつけ圧勝し、現職の沖縄選挙区選出の自民党議員不在となりました。新基地建設反
対で一致する「オール沖縄」の運動は、日本の新しい未来を切り開きました。これに
対し、安倍政権は、県民の民意を無視し7月11日から東村高江ヘリパッド建設を強行し、
抗議する住民を機動隊が力ずくで排除しています。また、辺野古新基地建設を巡って
沖縄県を提訴しました。これは民主主義に反し、沖縄県民に憲法が保障する生存権を
認めないものです。
    改憲勢力が3分の2を占めたとはいえ、国民は憲法改正、とくに第9条改正に支持を与
えてはいません。どの世論調査でも9条改憲に反対する世論が多数であり、共同通信社
の出口調査によれば、今回の選挙でも「安倍政権下での憲法改正に反対」が50%でした。
2012年に自民党が発表した憲法改正草案は、日本国憲法3原則(国民主権・基本的人権
の尊重・平和主義)を否定する内容です。特に9条第2項を改正し、国防軍を創設し、新
たに「緊急事態条項」を入れています。安倍政権は参院選において、憲法改正を争点に
することはありませんでした。
 初めての18歳選挙権の参院選での18・19歳の投票率は45%台であり、自民党に投票し
た率は40%でした。この間、学校現場や各地で「主権者教育」が実践され、学習会が取
り組まれました。「安保法制」反対に声を上げた高校生・大学生を中心に、「未来は自
分たちが決める」と若者独自の取り組みも行われました。
 教育現場においては、「政治的中立」の名の下に、管理が強められ、教員を「萎縮」
させる雰囲気が生まれています。自民党文部科学部会は、ホームページで「学校教育に
おける政治的中立性についての実態調査」を呼びかけました。呼びかけ文には「教育現
場の中には、『子どもたちを戦場に送るな』と主張し、中立性を逸脱した教育を行う先
生方がいる」とあり、ネット上で批判されると「安保関連法案は廃止すべきだ」と主張
するとの表現に差し替えました。これは教育への政治介入であり、密告を奨励するとし
て批判が集中したのは当然です。政権党が「実態調査」を行ったこと自体が、教育の自
由への侵害で、教員を一層、「萎縮」に追い込むものです。
 
 歴教協は、子どもたちを主権者として育てることをめざし、事実を積み上げ真実を見
抜く目を育てることに努めてきました。私たちは、憲法公布70年の今年、施行70年の20
17年を見据えて、主権者を育てる教育を広げることを呼びかけます。
 
2016年8月5日
               
                                                                                       一般社団法人歴史教育者協議会会員集会