「共謀罪」創設に反対する声明

By | 2017年2月21日
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 政府は、東京オリンピック・パラリンピックを口実に、「テロ等準備罪」(以下「共謀罪」)を今国会で創設しようとしています。「共謀罪」は、「行為」があって初めて犯罪が成立するという近代刑法の大原則を踏みにじって、「犯罪を行うことを相談、計画した」だけで処罰するところに本質があります。思想及び良心の自由を保障した日本国憲法19条に反する違憲立法です。「共謀罪」は、処罰の必要より国民の自由を侵す危険が高いとして、過去3回国会で廃案になってきました。
  「共謀罪」は、「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」をおこなうことを目的とした組織が、団体の活動としてそれらの共謀した者を処罰するものです。政府は「従来の共謀罪とは違う」とし、暴力団や詐欺集団のような「組織的犯罪」の犯行を処罰するもので一般市民は対象外だとしています。しかし、どういう組織かは警察の判断にゆだねられるのです。「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」は、現行法で600以上あります。また、金田勝年法相が、「共謀罪」国会審議に関し、「国会提出後、議論を重ねていくべきだ」とする文書を作成・配布したことは、憲法の大原則・三権分立を否定する行為です。
    政府は「共謀罪」導入を、「テロを防ぐ『国連越境組織犯罪防止条約』を締結するため」としていますが、この条約は、同時多発テロ以前の2000年に採択されたものであり、マフィアや暴力団による経済犯罪への対処が目的であり、テロ対策ではありません。日本はすでにテロ防止のため13本の国際条約を締結し、それに基づく国内法を整備しています。「テロ対策」の名で、国民の思想や内心までも取り締まる「共謀罪」は、物言えぬ監視社会をつくり、安倍政権が進める「戦争する国」づくりのための現代版「治安維持法」と呼ぶべきもので、国民を欺くものです。
    1925年制定された治安維持法は、当初示された目的が拡大解釈され、共産主義者、社会主義者のみでなく、自由主義者をも弾圧されました。教育分野においても、教育労働者の解放をめざした新興教育運動関係者を捕らえた長野県「二・四事件」(1933年)や、子どもの生活に密着し、ものの見方・考え方・生き方を育てることを目的とした東北や北海道などでの生活綴方・生活図画教育運動への弾圧事件(1940~41年)をはじめ、全国各地で、治安維持法違反容疑で多くの教職員が検挙されました。このような中、長野県では、子どもたちを満蒙開拓青少年義勇軍に積極的に送り出す戦争協力体制を推進する教育が行われたのでした。
    私たち歴史教育者協議会(歴教協)は、戦前・戦中の反省に立ち、憲法を土台に、平和・民主主義・人権の教育と歴史の真実に基づく歴史教育・社会科教育を追究してきました。そして安倍政権が進める「戦争する国」の国民の育成に反対し、学問・教育の自由の大切さを主張してきました。「共謀罪」が、治安維持法のように学問の自由な活動を脅かすのみならず、労働組合や市民団体の活動を弾圧するための道具として使われるのではないかと危惧します。
    私たちは歴教協設立趣意書にあるように、「歴史教育は、げんみつに歴史学に立脚し、正しい教育理論にのみ依拠すべき」という立場から、教育が再び権力の介入により歪められてはならないと考え、「共謀罪」創設に反対します。

2017年2月20日 一般社団法人 歴史教育者協議会常任委員会