編集長日記(4)「日韓関係を『歴史地理教育』に学ぶ」

By | 2019年10月20日

編集長日記(4)「日韓関係を『歴史地理教育』に学ぶ」

〇日韓歴史実践シンポに参加しました

先週は歴教協の日韓交流委員会主催の第18回日韓歴史教育実践シンポジウムに参加するため、韓国の蔚山・釜山に行ってきました。蔚山外国語高等学校で、日韓の教師による公開授業と授業報告がそれぞれ2つずつありました。その詳細は後日発行される報告書に譲りますが、日韓関係の難しい昨今、こうした交流が行われたことに、大きな意義を感じます。

 さて、この日韓関係に関する問題について、歴史的に考えるための論考を、最近の『歴史地理教育』から幾つか紹介したいと思います。 

 

〇中塚明インタビュー

 まず、最初のお勧めは、9月号の単発で掲載した中塚明さんのインタビュー「日韓の友好は、歴史の事実を見つめることから」です。中塚さんは日清戦争の研究で高名な歴史学者です。インタビューでは広く知られた、日清戦争のきっかけとなった日本軍の朝鮮王宮占拠に関する一次史料の発掘など、これまでのご研究について語って頂きました。特に近年は日清戦争に深く関係する東学農民戦争の遺跡を、現地韓国に訪ねる旅を主催されて、多くの参加者と共に韓国の人々との交流を続けてられています。この交流についてもインタビューでは詳しく語って頂きました。

 私もインタビューに同席させて頂きましたので、この機会にと思い、授業で生徒に聞かれて前々から気になっていた、「なぜ征韓論以来近代日本は、朝鮮・韓国を侵略し続けたのか?」という問題について、お聞きしました。この質問をしたのは、一般にいわれる植民地に求められる市場や資源という答えでは、明治初期の日本の資本主義未発達の状況を考えると、答えにならないと生徒の納得が得られなかったからです。米の供給地とか、山県有朋の国家の利益線の確保など、幾つかの想定をしたのですが、中塚さんの答えは別のところにありました。その詳細は『歴史地理教育』9月号に譲りますが、かなり意外なものでした。

 

〇「慰安婦」問題をめぐって

 最近、愛知トリエンナーレの表現の不自由展でも話題になった「従軍慰安婦」問題については、大阪市の公立中学で精力的に授業実践をされている平井美津子さんが、最新の『歴史地理教育』10月号「ジェンダー平等、女性の権利拡大」と題した短文で、言及されています。明快な論旨で、この問題の本質を指摘されています。また、来月の11月号では、「性暴力を授業する」との題で、連載「高校生と考えた憲法・平和の授業」の⑧で、長年高校の教員をされ、現在は大学で教職課程の大学生を教えている北海道の山本政俊さんが「平和の少女像」を教材に実践された授業を紹介されています。高校生の関心に寄り添って難しい戦争加害の問題を取り上げた秀逸の授業です。

 

〇三・一運動をめぐって

 そして、時宜にかなったテーマで話題となった、今年3月号の特集「三・一独立運動、五・四運動一〇〇年と日本」の巻頭論文の「三・一運動一〇〇年から何を学ぶか」(加藤圭木さん)をはじめ、韓国教師の授業報告「韓国の子どもたちは三・一運動をどう学んだか」(朴範羲さん・翻訳は永島梓さん)、そして、同じ号の「中学校の授業 歴史 中学生と学んだ三・一運動」(小林優香さん)も、それぞれ学ぶことの多い論考と授業実践の紹介です。加藤圭木さんは、来年初春の歴教協の中間研究集会での講演が予定されています。また小林優香さんは、冒頭で触れた蔚山でのシンポで韓国の高校生を相手に、同じ三・一独立運動について授業されました。それぞれ、ご一読を皆さんにお勧めします。

                                   (若杉 温)