編集長日記(5)「『鎖国』か『海禁』か?」

By | 2019年11月3日

編集長日記(5)「『鎖国』か『海禁』か?」

 11月号は、「明の海禁政策と日本の『鎖国』」と題して、日本の近世の対外政策を東アジアの視点を踏まえて考える特集を組みました。「鎖国」の見直しについては、1997年の10月号以来、約20年ぶりの特集です。その表題は「新しい『鎖国』の見方・学び方」で、いわゆる「四つの口」の長崎・薩摩(琉球)・対馬・松前の4つの窓で、日本は外国とつながっていたという「鎖国」観の見直しが提起されています。今回も4つの窓ごとの論稿を並べましたが、「鎖国」概念を相対化するとして、注目される明の海禁との比較を打ち出すことで、新たな問題提起となっています。

 まず、お勧めは巻頭論文の木村直樹さんの「幕府の『鎖国』政策とその実態」です。とにかく“めちゃくしゃ”おもしろい論稿です。8pのものですが、大変わかりやすいので、“サクサク”読めます。何がおもしろいかというと、具体的な貿易品の流通の様子で、長崎中心に4つの窓の相互関係も含めて、「鎖国」体制の実態を語っているところです。モノのやり取りの様子が目に浮かぶように思えて、これは是非、授業化したいと教師に思わせてくれる魅力的な論稿です。

 今回の特集の目玉である明の海禁政策と「鎖国」との比較については、山崎岳さんから、「海禁とはなにかー中国史の立場から」という論稿を寄せられました。中国史の史料から、海禁という言葉を取り出し、その意味合いを厳格に検討している論文です。高度な内容ではありますが、“頑張って”読むと、安易に海禁と「鎖国」を同一視してはいけないことを強く印象づけられます。

 また、日本列島の南北の出入り口の琉球、蝦夷地については、麻生伸一さんの「近世日本の対外政策と琉球」と東俊佑さんの「アイヌの交易世界と松前藩」がそれぞれ、その実態を具体的に明らかにされています。これらの論稿をまとめて読んで頂けると、東アジアの中の近世日本の対外関係について、豊かな歴史像を得ることできると思います。

 実践では、対馬や倭寇を取り上げて、中世から近世に掛けての東アジアの中での日本の対外関係について授業した関誠さんの「対馬から見る中世東アジアの陸と海」という中学での実践を掲載しました。関誠さんは、東京都の公立中学校で教えられています。2016年の7月増刊号の『歴史の授業は子どもが主役』と題した小中高校の実践集で「荘園の授業」を寄稿して頂きました。その時の実践でも、今回のものでも、ともに生徒との対話を中心に授業を展開されている点が印象的で、追試をしてみたくなる優れた授業実践です。他の研究論文と合わせて、ご一読をお勧めします。

他にお勧めは、冒頭の1997年10月号「新しい『鎖国』の見方・学び方」2015年2月号の「悪党と倭寇」といった10月号と内容の関連するバックナバーと併読されることです。この20年での研究・実践の進展、中世と近世の日本の国際関係の変容がよく理解できると思います。(若杉温)