9月授業づくり講座のまとめ

By | 2020年9月17日

 「主権者意識を育てる 中学校地理学習をめざして」
 2020年9月13日(日)  講師 石戸谷浩美(東京学芸大学附属竹早中学校教諭)
司会 宮下和洋  

1.参加者 19名
   小学校 3名、 中学校 5名、 高校 2名、 特別支援学校 4名
   大学 1名、 大学生 4名 

2.講師からのコメント(抜粋)
 たくさんの方に参加していただき、また貴重なご指摘をいただくことができ、心から感
謝申し上げます。発表者として、なによりビデオをZoomで見せられるか心配でした。
 やっぱり、発表者が一番勉強になります。諫早湾の干拓堤防問題のドキュメンタリー番
組を使った1時間の授業報告でしたが、映像の使い方では番組をフルで使うかどうかや、
途中で止めて発問するアイディアをいただいたり、最後の発問の言葉の吟味など、授業の
時には気づけなかったことをご指摘いただき、まだまだこの歳になってもわかっていなか
ったことが恥ずかしいですが、そのことで意見交換ができたことがうれしいです。
 北海道の山本さんからは、講座の間にチャットで授業展開の代案をいただいたり、私の
思いつきに「それいただき!」とやりとりできたのも、Zoomだからこそですね。遠く離れ
た場所から、リアルタイムで意見交換できるのはすばらしいですね。直接対面で話せた方
が互いの表情もわかり、見せたい実物も使えたりしますが、今後の講座の1つのあり方を
示せたようです。
 地理学習が、自然決定論で終わらず、ものづくりの工夫を学び、地域で働き生活する人
々のすばらしさを知ることで、そうした人々の人権を守ることの大切さを考え、また、国
政レベルの問題と闘う地域の人々の姿を学ぶことで、自分たちの問題として政治に関わる
という意識を育てるのだ、という、当たり前のことにやっと気づきました。政治をしくみ
だけで抽象的に語るのでなく、地域の現実のなかで闘う人の姿として学ぶ場面として、地
理学習が生かせたら、まさに主権者を育てるための「種まき」になるのではないか。
 地理学習の既成概念を打ち破り、「何でもあり」こそ地理だ、という大学の恩師の言葉
を授業づくりにも生かしていきたいし、みなさんにもそう思ってほしいと思います。
 
3.参加者の感想(一部抜粋)
*本日はこのような機会を作って下さりありがとうございました。沢山学ぶことがあって
    とても有意義な時間になりました。特に私は大学の石出みどり先生の授業で「良い問い
    は良い授業をつくる」という事を学んでいたので、今回子どもたちへの問の投げかけ方
    などについて多くの意見が交わされた事で発見が沢山ありました。また、石戸谷先生の
    お話を聞いてこの講座を受ける前は諫早湾の問題をなぜ1時間も使って取り上げるのだ
    ろうと思っていました。ですが、今日お話を聞いて主権者意識というものが分かりこの
    事例を取り上げた理由を知ってスッキリしました。現役の先生方の問やお話、また同じ
    大学生の方の考えも分かりとても貴重な時間でした。

*石戸谷先生のお話を聞いて「地理=暗記、つまらない」という印象がガラッと変わりま
    した。地理を教えてみたいとさえ思えました。授業計画や教材選びをどのようにすべき
    かのヒントを頂きました。先生の授業計画書を見るとタイトルから工夫されていて、き
    っとラインナップを見て生徒も次の授業を楽しみにしているのだなと思いました。農家
    の人の技術のすばらしさ、主権者として国と戦っている人を紹介することで自分たちの
    主権者意識を育てるという話納得しました。授業映像を見た後は、国・政府はひどいな
    という印象が残りました。自分たちの権利を守るためにも色々勉強しなければならない
    とも生徒は感じると思いました。その気になれば、すべてが教材研究。この言葉を受け
    止めて研鑽に励みたいと思いました。

*地理という学びの見方が広がりました。今まで自分が受けてきた授業でしか、地理とい
    う学問を見れなかったのですが、公民的分野も取り入れながら、その地域の問題を捉え
    ていくというのは大事な地理的視点ですよね。特に現在進行形で行われていることに目
    を向けることで、今も困っている誰かがいるという事実に気付けることが中学生にとっ
 ては大きいことだと思います。どうすればいいかを考え続けるというテーマを非常に具
 体化した授業で、とてもおもしろかったです。年間計画や単元計画など、大きな視点で
 捉えるということを学生は学生のうちには経験できません。模擬授業も経験が限られて
 おり、単元をどう捉えるか、など俯瞰的に見ることがなかなか難しいです。きっとそれ
 は現場に行って失敗しながら学んでいくものだと思います。しかしこのような場で、実
 際の先生の話を聞けることが、少しでも視点を広く、アンテナを高く張れることにつな
 がると思いました。

*まずは、私はじめ学生の参加しやすい状況を作っていただきありがとうございました。
 日本近現代史を専攻している私にとって、遠く感じる存在であり、難しそうと感じる存
 在であり、教員になるに向けて最も不安要素であったのが「地理」でした。今回の講座
 を通して、地理だからこそ出来ることが沢山あるということを学ぶことができました。
 「地理学習がまさに「種まき」になるように」という、自分の中になかった授業観や「
 地理観」を持つことができただけでも、今回参加した意義があったと感じています。何
 より、ベテランの石戸谷先生の実践例を見て、色々な意見交換ができたことが良かった
 と思いました。全27枚の熱い学びの多い資料を用意してくださった石戸谷先生に感謝申
 し上げます。また、私の拙い意見も受け入れてくださった皆さんにも重ねて感謝を申し
 上げます。次回も可能であればぜひ参加したいと考えています。