投稿者「温若杉」のアーカイブ

『編集長日記』(1)今、カナダを知る絶好の特集です!!

編集長日記(1) 今、カナダを知る絶好の特集です!!

 今回から、『歴史地理教育』の編集や論稿などについての色々な情報を発信するために、ブログをはじめます。

 今月の9月号では、「もっと知ろうカナダの今」と題して、カナダの地理や歴史、文化などを特集しました。

 お勧めはいろいろありますが、まずは巻頭の細川道久さんの総論、「他民族国家カナダの過去と現在」です。カナダというと多民族、多文化共生の社会をイメージします。しかし、副題に「多文化共生への模索」とあって、未だ理想には遠く、国の成り立ちからの様々な試み、試練を経て今があり、その現在も決してうまく行っているわけではないことがわかり、読んで大変勉強になりました。トランプの登場で揺れるアメリカの移民排斥の動きが決して特殊なものではなく、隣国カナダにおいても、多民族の共生が困難であることを知り、その努力に共感を覚えました。

 もう一つ、印象的だった論稿は特集のトリの岡田健太郎さんの「カナダ政治の現在―イギリスらしさと独自性と」と題したカナダ政治の今を語った論稿です。同じヨーロッパの植民地であったアメリカが革命戦争によって独立し、自由の国をつくったといわれるのに対し、カナダは長くイギリスの植民地にとどまり、独立後も英連邦の一員であり続けています。

 しかし、それでいて、いやそれだからこそなのか、イギリス発の民主主義制度を成熟させ、また、充実した社会保障制度をもち、そして多文化共生をめざすという、アメリカとは大きく異なる国家、社会を形成してきました。その歴史の歩みを語りながら、現在のカナダ政治の課題について、わかりやすくまとめた内容です。フランス系の人々が多いケベック州の独立問題についても、「なるほどそうだったのか」という説明があります。

 中高での地理や世界史の授業で、カナダを取り上げるには、大変参考になる特集ですし、現在の世界の動向を知る上でも、広くお勧めしたいものです。                (若杉 温)