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(以下、東北、東海、中国、北海道、関東)

充実した東北ブロック集会ができました


  今年の東北ブロック集会は、八戸市で開催された。東北各県歴教協の研究活動の中でも、その中身の濃さにおいて重要な位置を占める集会だけに東北6県全体に関わり、研究活動の方向性も示すようなテーマの設定が模索されたが様々な諸条件の重なりの中で、充分煮詰めることが出来ないままの開催になった。
  それでも、東北各県の担当の先生方とのやりとりの中で、八戸であれば、安藤昌益のことをしっかり学習したいという声が寄せられ、恰も、そのことを核に集会が予定されていたかのように事が進んでいった。市民の手による安藤昌益の資料館が開館したばかりというタイミングの良さも幸いし、充実した二日間の集会になった。

  「地域史料の活用」報告は、実践に結び付いたものと地域史料を掘り起こしたものに大きく二分し行われた
・「一つの絵から豊かな歴史を見つける ー秋田にある絵画資料を扱って」(秋田・渡部)ー絵画史料は、自分たちの経験や知識を生かし、同一の史料から多くの異なった事象を見つけることが出来、主体的な学習に有効であると確認された。
・「主権者を育てる社会科授業の試み」(山形・佐藤)ー戦中・戦後のある事件、事柄に焦点を当て、新聞づくりに取り組ませた報告。戦争体験を取材し、命の大切さを実感した子の話は、大きな感動を与えた。
・「大櫻農園」(岩手・北舘)─現在、農家が抱えている様々な問題を紹介。村を守っている人がいなくなると、日本の農村は崩壊するという指摘が重い。
・「日清戦争と軍夫」(青森・伊藤)─軍夫という、あまり知られていたない史実の真偽を、具体的な史料で確かめることの必要性を、鋭くついた報告であった。
・「吉野作造と宮城県のかかわり」(宮城・永澤)─大正デモクラシー運動に理論的基礎を与え、卓越とした先駆性と行動力をもった思想家の、宮城県との関わりを丁寧に掘り起こした報告。旧天皇制や軍部を批判した視点は現代に通じる。
・「戦争中の三戸・八戸」(青森・小泉)─戦争中の様々な庶民の暮らしや占領に対する民衆の静かなレジスタンス等の史料を発掘し紹介しているという報告。占領期の様子が分かる史料や戦争遺跡の実態解明も進んでいる。

  「安藤昌益資料館」は、地元の歴史研究家を中心に、行政の力に頼らず、民間だけの力で開設した手作りの資料館である。その運動の中心となって活躍された館長の三浦忠司さんに、その人となり、思想の神髄を語っていただいた。幕藩体制の中で培われ、人間存在の根本的な在り方を考え続けた昌益の思想はその著書『自然真営道』に集約され、混迷を深める現代社会において、一層その輝きを増す。体制批判、男女平等、日本国憲法の根本に繋がる思想、エコロジーと公害の警告、非戦平和、飢餓の原因を人的なものと批判する等、現代社会の抱える深刻な問題に、先験的な目を持って警告している。

  二日目は、湊朝市の見学と資料館のフィールドワーク。新鮮な魚介類を中心とした数多くの屋台の雰囲気を楽しんだ。気取らない庶民の逞しさ、拘らず自由に市に参加し頑張ろうとする人々の直向きさを強く感じた一時でもあった。
  資料館の説明も、三浦先生にしていただく。なぜ昌益が八戸に来たかは明らかではないが、町医者として藩医をしのぐ力を持ち、万民がみずから耕作して生活する自然の世を理想とし、「直耕」せずして農民を支配する武士階級「不耕貧食の徒」がつくる幕藩体制を徹底的に批判した。江戸時代、幕藩体制を否定した思想家は安藤昌益のみで、改めて現代を考える多くの視点を与えてくれる。資料も手にとって見ることが出来、民間の力で開設した良さが所々に滲み出ている資料館であった。日程的にきつかったが、有意義な集会であった。
                               (青森県歴教協 寺田 肇)  
歴教協東海ブロック集会の報告

 1.2009年11月28日、29日静岡市清水に50名が集う!
  初日は15時から18時まで静岡大学笹沼弘志先生の「貧困社会は超えられるかー雇用と貧困、ホームレス問題の現在を問う」講演。先生は静岡市で夜回りをする一方、中学校等でホームレス問題の授業を指導し、現代の貧困を鋭く突き出している。 「派遣村、ホームレス排除は社会が貧困であるということ。会社では我慢して働くことが自立とされ貧困に陥ったら家庭で共助、社会で公助。決して国家に頼ってはならないというエセな自立を超えなくてはならない」と。
  これにかみ合う形で歴教協静岡の伊藤和彦さんの授業実践「高校キャリア教育」の報告。「文科省のキャリア教育は自己責任型。企業や労働に対する疑問や怒りを自己の側で解決させようとする。これを超えるには『団結』の経験の学びをさせなければならない。(例えば、生徒会行事等)」二つの問題提起に対して満員の会場からみかんを食べながら熱心な質疑が出され、現代の貧困やキャリア教育に対する認識が深められた。

  夜はまず各県活動報告。各県からは「会員の高齢化をどうするか」「若い人をどう集めるか」の悩みや工夫が報告された。交流会には静岡市に学ぶミャンマーやスリランカの留学生も加わり一味違った国際交流が夜遅くまで盛り上がった。
  二日目のフィールドワーク(FW)は「朝鮮通信使の歩いた道―興津清見寺から薩垂峠・由比」(歴教協静岡の北村欽哉さんの案内)。清見寺では通信使の多くの書・詩歌の扁額を見ることができた。通信使のために拓いた薩垂峠道では残念ながら広重の版画の富士は雲の中。そして東海道の宿場町であり、「共同」労働・「平等」分配の桜エビ漁の由比へ。高齢の人もがんばってみかんと枇杷の花咲く暖かな峠道を通信使をしのびながら歩き通した。

2.ブロック集会を終えて
@集会実行委員会として、市(県)内の若い教員にも参加を呼びかけ参加してもらうという目標を立て取り組んだ。そのためには講演とFWを社会科授業実践に取り入れられ、あまり難しくなく取っ付きやすいもの、しかし、少しは現代の問題を提起したいという欲張ったもの。結果的には会員以外の参加者も多くみえた。呼びかけも市(県)内に広く行い歴教協の活動を宣伝し、若いメンバー参加に道を拓くことができた。
A各県報告ではそれぞれの現状・課題・取り組みが話された。共通していたことは会員の高齢化・若い新たな会員が少ないということ。これを打開するために各県それぞれが取り組んでいた。活動内容においては若い教員向けに教育実践研究を。組合や市民組織との連携で若者とふれあう。歴教組織としては支部がしっかり活動をして基礎をつくり、県の活動に連携させる。いずれも東海5県として今後十分な意思疎通をして打開していかなくてはならない課題だ。
                            (歴教協静岡市支部 山田 勝洋)
中国ブロック集会報告−中世の国人益田氏を中心に

  昨年12月5日(土)から6日(日)にかけて、島根県益田市で中ブロ集会が行われた。本部から1名、広島県と岡山県から2名ずつ、山口県と鳥取県から1名ずつ、地元島根から5名が参加した。
  実践報告は2本あり、最初に「教室で学ぶ意味を問い直す歴史学習」(「満州事変」を学び合う生徒たちの姿を通して)と題して、山本悦生氏(津和野町立木部中学校)が報告した。「満蒙は日本の生命線」について田中義一・幣原喜重郎・石橋湛山の主張を知って、誰を支持するか自分の考え(一次解釈)を書かせて小集団で討議し、改めて3人の主張のうち誰を支持するのか(二次解釈)を書かせ、一次解釈から二次解釈への間に、生徒の考えにはどのような変化があったのかを分析した報告である。2本目は、「スライドを利用した平和教育」(沖縄戦と十五年戦争)と題して、椋木利則(益田翔陽高校)が報告した。3回の沖縄ツアーで撮った写真と資料により、沖縄戦と現在の基地の状況を考えさせる実践と毎日新聞社の一億人の昭和史から接写した写真と資料により、十五年戦争の内容を説明する1982年から27年間行っている報告である。

  最後に益田氏教育委員会の木原光氏から、翌日のフィールドワークために益田市の古代から中世についての詳しい説明があった。たのしい地元の居酒屋での各県交流会を終え、翌日は、木原光氏の案内でまず益田市立歴史民俗資料館を訪問し、つぎに折良く現地説明会が益田氏の居館であった三宅御土居跡で開かれていたので、そこに参加して詳しい説明を受けた。最後に神戸産の御影石でつくられた益田氏一族の墓といわれている高さ2メートルを超える五輪塔を見て、来年の鳥取県中ブロ集会での再開を誓って解散した。
                              (島根県歴教協  椋木 利則)
授業をつくる!歴史を紡ぐ教室へ−北海道ブロック報告−

  2010年1月6〜7日、北海道歴史教育者協議会は、札幌市で冬の合宿研究会を開催しました。参加者48名。
  授業「クローズアップ現代」と称した3つの講座は、どれも参加者の満足を得て好評でした。ゲスト太田満さん(旭川アイヌ語教室)のアイヌ民族講座は、新しい1歩になりました。渡邉圭さん(石狩・千歳中)の授業実践「はじめよう『アイヌ民族学習』〜いつでも・だれでも・どこでもできる学習を目指して」には、「視覚に訴え、作業がある、参考になる。自分も取り組んでみたい」との感想が寄せられました。
  ゲスト湊 栄市さん(札幌ローカルユニオン結)は「労働相談の現場から見える今」を報告。米家直子さん(浦幌高校)から「使える社会保障制度」の授業実践が出されました。 「労働と社会保障は、今最も子どもたちと学びたいテーマです。「生きる」とはどういうことか、この厳しい社会を一人ではなく、仲間や他者と手をつないで生きる希望をはぐくんでいくことが今求められていると思う。」「労働運動の歴史や、剰余価値などを把握した上で授業をすることが大切だ。最も大切なのは、一人一人生き抜く術を教えるのではなく、団結の必要性を明らかにすることだ」との意見が出されました。

  3人目のゲストは、野呂光夫さん(農民連)が「北海道農業の現状/WTO閣僚会議にむけたジュネーブ国際行動」をレクチャー。村越含博さん(芦別小学校)の地域の人とつながる農業の授業を学びあいました。 NHKの『坂の上の雲』の放送で、日清・日露戦争の歴史認識が問われています。私たちは何をどう理解し、授業をしていくのか。「日韓併合100年が問いかけること」と題した大濱徹也さん(元北海学園大学)の講演は、フロアから多数の質問と意見が出て、とても刺激的な議論となりました。以下はレポート。
<小学校>
佐藤広也(札幌・石山南小)「『せんすおぶわんだあ』『もっと社会やりたい!』の声が上がる、時代の変化を読み取る、時代の変化のわけを考える2009」
岡野正丸(日高・日高町里平小)「1・2年生の現状認識から始まる国旗・『日の丸』そして国歌・『君が代』の授業実践」
<中学校>
塚本裕子(石狩・北広島東部中)「ヨーロッパ人の来航〜じゃがいものふるさとと大航海時代」
石橋英敏(檜山・江差北中)「中学公民『労働者の権利』を学習して」
平井敦子(札幌・真駒内中)「どうやって授業をしています?人類誕生と原始生活」
<高 校>
松本徹(胆振・室蘭工業高)「『戦没者名簿』・『沖縄戦英霊記念の碑』から『平和の礎』へ〜沖縄見学旅行事前学習の試み」
塩地ひろ美(学生・酪農学園大)「地域紛争と難民問題〜ウガンダの子ども兵士」
瀧澤 正(札幌・教育大非常勤講師)「教育大生は“日米開戦”の授業にどう応えたか」
村上博章(大麻高校)「倫理『人物調べ学習』を通じて自分の生き方を問うV」
林恒子「旧北部軍司令部防空作戦室の調査報告書と戦跡保存運動について」
松林洋(上磯高校)「サンフランシスコ平和条約」
                               (北海道歴教協 山本 政俊)
関東ブロック研究集会報告

 「子ども・地域とともにつくる歴史教育・社会科教育」というテーマの下、12月26日(土)、27日(日)に関東ブロック研究集会を茨城県つくば市の筑波学院大学で開催しました。茨城県歴教協では約1年をかけて準備を進め、当日を迎えました。会場はつくばエクスプレスの開通や学生との関わりを意識し、つくば駅の近隣で開催することで準備を進めました。また、組織拡大につながる集会運営を目指し、普段の例会や県大会で会員以外の報告者による学習の機会も設けてきました。
  1日目は、12時30分からの開会集会に続き、前国立歴史民俗博物館長の宮地正人さんによる「福沢諭吉をどう位置づけるか 〜日本近代史の見方〜」という講演が行われました。福沢と自由民権、天皇制国家と自由民権、脱亜論などについて論じていただきました。

  その後、1日目の14時30分から、そして、2日目の9時から分科会を実施しました。分科会は、@小学校、A中学校・高校、B世界、C地域・平和・憲法の4つの分科会で報告・協議を行いました。関東各都県の協力で19本の報告を行うことができました。開催県茨城からは、6本の報告を出すことができました。内容は、小学校分科会では生活科の町探検と学び合いの報告、中学校・高校分科会では県内の戦争遺跡の掘り起こしとその教材化に関する報告、食糧危機下の農業と投機マネーに関する授業実践の報告、教員生活2年目の授業を振り返る報告、世界分科会ではポーランドの歴史問題に関する報告、地域・平和・憲法分科会では山城調査の体験とそれを生かした地域学習に関する報告を、それぞれ行いました。それぞれの報告に課題はありましたが、茨城県歴教協にとって大変貴重な機会となりました。また、横浜市の教科書問題に関する報告、東京都の管理的な教育行政のために運営が困難になった定時制研究会に関する報告など、各地で直面している問題に関する貴重な報告もあり、意義深い分科会となりました。

  2日目の11時30分からの閉会集会後に、フィールドワークも実施しました。巡検先は、国土地理院の「地図と測量の科学館」、平沢官衙遺跡、筑波山神社の3か所でした。巡検場所によっては時間が短いところもありましたが、つくば市内をマイクロバスで巡り、史跡等を見学することができました。
  閉会集会では、次回の開催地である栃木県を代表して、飯田進さんに挨拶をいただきました。参加者は90名で、そのうち学生が12名でした。少数でしたが、新たに全国会員になってくださった方もおり、この集会の成果を今後の組織の拡大に生かしていきたいと思います。
                               (茨城県歴教協 石上徳千代)