皆で学んだ「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」 歴教協第41回中間研究集会報告(ハイブリッド)

By | 2023年3月11日

 1月8日(日)に「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」というテーマで、第41回中間研究集会をラパスホール
で実施しました。会場に42人、オンラインに71人の合計113人の参加があり、時宜にかなったテーマということ
もあり熱のこもった集会となりました。              
 

《講演について》
午前の講演では 山田朗さん(歴史教育者協議会委員長・明治大学)が「ウクライナ戦争と日中戦争、そして
現代日本の軍拡を考える―その類似性と危険性―」をテーマに日中戦争と比較してのウクライナ情勢と現代日本
における大軍拡と改憲の潮流について語ってくださいました。
前半の「類似性」では①1930年代の日本と現在のロシアはともに軍事大国であり侵略国、②「満州国」建国(1
931~32年)とクリミア併合(2014年)を「成功事例」と認識した、③一撃によって相手が降伏する、政権が崩壊
すると見た誤算、④長期戦化して一般市民の犠牲が拡大、⑤「戦争」と呼称せず、戦争の実態を国民に知らせな
い報道体制という5点をあげて言及しました。後半の「危険性」では①軍拡加速化、②新たな戦争、③残虐兵器使
用、④和平実現の困難性の4点について触れて、ウクライナ戦争は第3国(中立国・勢力)による和平仲介しか打
開の道はないと論じました。
「類似性」と「危険性」を指摘したうえで、今回の講演のヤマ場とも言うべき「現代日本における大軍拡と改憲
の潮流を許さない」ために現状をどのように分析、打開したらよいかの提言がありました。「台湾有事=日本有事」
論の喧伝により「防衛費増額賛成論」の増加、現実に2023年度防衛予算段階ですが1年で2兆円弱の増加の可能性
に触れ、中国との軍拡競争が「加速」する危険性を強調されました。同時に「スタンド・オフ防衛能力」は「敵基
地攻撃能力」へと転化、危険な新戦略の台頭も考えられると指摘されました。
 最後に、新しい安保3文書(国家安全保障戦略②国家防衛戦略③防衛力整備計画)の問題点を明らかにして、軍
拡・改憲の潮流を押し返すために?戦争の記憶の継承、②戦争の歴史と実態、軍拡の実態を知ること、③戦争に加
担しないという3点を力説、強調されました。

《報告について》
 午後は、午前の講演を受けて山本悦生さん(島根県歴教協、津和野町立津和野中学校)が「世界の”今”を授
業に―歴史学習の最後に取り上げたウクライナ侵攻―」、続けて中條克俊さん(歴教協副委員長、中央大学)が
「関東大震災/朝鮮人虐殺事件100年―関東大震災直後に何が起きたか」を報告してくださいました。
 山本さんは、2022年6月現在のウクライナ情勢から2時間構成の授業実践を報告しました。1時間目はロシア
のウクライナ侵攻の現状を確認して、2時間目は「ゼレンスキー大統領は2月24日の侵攻前に戻すまで抗戦すべ
きか、約20%を明け渡して停戦すべきか」という問いを提示して討論を深めることができたとのことでした。
 中條さんは、関東大震災100年にあたって9月1日は「防災の日」だけではなく「追悼の日」であることを忘れ
てはならないとして①朝鮮人虐殺事件②中国人虐殺事件③金子文子・朴烈事件④亀戸事件⑤福田村事件⑥大杉栄
虐殺事件(甘粕事件)を扱った授業実践について報告されました。

 講演、報告を受けて、会場並びにオンライン上での質疑応答がおこなわれ、テーマの重要性から実りある討議
ができ、兵庫大会への流れをつくることができました。

《アンケートから》
 アンケートには「時宜にかなった講師と報告者の人選でよかった」、「ウクライナをどうとらえるかというテ
ーマは、教員でなくとも参加しやすかった」、「市民の方の参加も多く、関心が高いことがわかった」、「ウク
ライナ情勢とあわせて関東大震災100年の報告もあってよかった」という声がありました。

1/10現在集計 よかった まずまずだった 不満だった
オンライン参加者 17人(85.0%) 3人(15.0%) 0人
会場参加者  6人(75.0%) 2人(25.0%) 0人
合計 23人(82.1%) 5人(17.9%) 0人