参加してよかった第36回中間研究集会

By | 2018年1月21日
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                                                              第36回中間研究集会報告

1.中間研究集会の開催
 第36回中間研究集会は2018年1月7日、ラパスホール(東京労働会館)を会場に、「『明治150
年』を検討し批判するー2018年京都大会に向けて」をテーマに実施された。午前10:00に開始し、
以下の講演・報告を中心に学び合った。参加者は105名(報告者2名を含む、うち学生4名)で
例年よりも多く、会場は開催時間になっても受付が終了せずに多くの人がごった返すという状況
で開催することになった。講演・報告後は「憲法を生かした学校・地域をつくろう」を討議の柱
に、分散会・全体会をおこない午後4:40に終了した。
 ①講演「明治150年史観を検討し批判する」山田朗氏(明治大学、歴教協委員長) 
 ②報告「新学習指導要領で中学歴史の授業はどうなる?どうする?」倉持重男氏(埼玉歴教協)
 ③報告「4月からの小学校道徳は具体的にこうする~子どもの内面に介入しない指導法と評価」
  宮澤弘道氏(公立小学校教員・道徳の教科化を考える会代表)
 
2.講演・報告などの概要
 山田講演に先立つ開会挨拶では、政府(内閣官房)は「明治150年」をどう概念規定し、どのよ
うなねらいで、どのようなことをしようとしているか、「明治150年」政府広報オンラインをもと
に注意を喚起した。
[政府広報オンライン: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/meiji150/portal/torikumi.html
①山田講演
 山田講演では、改憲問題は歴史認識問題であるとして、改憲論の底流をなす「明治150年史観」
とは何か、歴史修正主義と「明治150年史観」を克服するには何が必要か、ということが語られた。
そのなかで、歴史修正主義と「明治150年史観」を克服するためには、日露戦争認識と日中戦争認
識の見直しの重要性を提起した。そして、歴史認識問題のポイントとして、戦争のイメージについ
ては日露戦争ではなく日中戦争に組みかえることが必要であるとして次の2点を指摘した。
(1)日露戦争について、戦費を米英の外債に依存しその後の財政を制約したこと、戦争は米国の支
援で遂行されたが、その後の日米対立の種を蒔いたことなど、日本人自身がこうした真相・実態を
知らずに過剰に持ち上げていること。
(2)日中戦争については、日本軍兵士が中国各地で繰り返した虐殺・虐待・略奪・性暴力などのた
め、語られない「記憶から抹消された」戦争となっていること。それゆえ、歴教協などによる掘
り起こしが大事であること。
 山田委員長の問題意識と学識の深さを改めて認識することとなった提起と指摘の講演であった。
[山田講演:『歴史地理教育』2018年7月増刊号に掲載予定。さらに学ぶには山田朗『日本の戦争
:歴史認識と戦争責任』(新日本出版社、2017年12月)。『歴史地理教育』2018年1月号より「歴
史修正主義と『明治150年史観』」を連載中(12回を予定)]
②倉持報告
 倉持報告では、これまでの自らの授業実践をもとに、新学習指導要領での「主体的・対話的で深
い学び」という理念は歴史学習の観点からは評価できる。しかし、新学習指導要領での「自国愛」
の押しつけ、教科書の内容などの実態・現実を見ると、期待される「主体的・対話的で深い学び」
は「画餅」となるのではないかと指摘した。そして、地域に埋もれている明治期の平和と民主主義
の先駆者である臼倉甲子造を掘り起こし教材化したことを例に、「生徒や地域の現実」の上に立っ
て現代と切り結ぶ歴史教育・社会科教育を教員自身が創っていくことの重要性を主張した。
 倉持報告は生徒への思い、授業への思いがあふれるもので、若い世代の道標となる報告であった。
[倉持報告:これまでの実践については「『地域』と『史実』―私を救ってくれた二つの歴史授業」
『歴史地理教育』2017年7月増刊号所収)参照]
③宮澤報告
 宮澤報告では、小学校で教科としての道徳が4月から実施、という状況のなかで、現職教員として
「教科された道徳をこんな観点で、こんなことに気をつけ、こう教える」という具体的な提起があっ
た。特に「子どもの内面に介入しない指導法と評価」として、文科省作成教材「手品師」を例に、教
材を全文読み合ってから児童が意見・感想をだしあう「全文読み」ではなく、読み合うのを途中でと
め、その場で「主人公はこののちどうしただろう」などを問い、児童がそれについての意見・感想を
だしあう「中断読み」を提起した。「全文読み」では、児童が様々な受けとめ方をしそれらの意見・
感想をもとに活発に論議をすることよりも、教材の結論に沿って誘導された感想・意見を述べ合うこ
とになりがちであり、「中断読み」をすることで、児童は多様な意見・感想をもとに活発に論議をし、
多様な受けとめ方を認めあうことの大切さを認識するということであった。
 宮澤報告は現場の悩みに応える具体的な提起であり、これまでの実践の質の高さを感じさせた。
[宮澤報告:さらに学ぶには宮澤弘道・池田賢市『「特別の教科 道徳」ってなんだ?』(現代書館、
2018年1月)]
 以後の分散会・全体会では、現代の政治状況、改憲問題、北海道、福島の「明治150年」推進キャ
ンペーンの実態、琉球処分から今に至る沖縄の問題、新学習指導要領と「授業づくり」の関連、道徳
の教科化の根本的な問題などについて、情報交換・意見交換がおこなわれた。

3.参加者について
①例年よりも多い参加の要因
 今回100名を超えた要因として、集会テーマが明瞭であり、
(1)政府の「明治150年」推進キャンペ
ーンへの批判、新学習指導要領、道徳の教科化への不安・関心の高まりに応える企画であったこと、
(2)関東都県歴教協の積極的な取り組み(集会参加のチラシ配布、参加呼びかけなど)、
(3)HPへの早期掲載、歴教協メーリングリストの活用などがあげられる。
②参加者の感想から
(1)山田先生のお話、非常に勉強になりました。特に明治150年史観が日露戦争を賞賛し日中戦争には
沈黙するという問題をかかえていることがよく分かりました。当時の新聞などは日々の授業でも是非
使いたいと思いました。特に「記憶」をどう継承してのかは大切であると感じます。正確であろうと
する歴史に対して、分かりやすいストーリーラインが好まれてしまう。「記憶」をどう生徒に伝えて
いくのかは、教員として考えさせられます(20代)。
(2)歴史教育に関する内容から道徳の教科化に至るまで、様々な内容について考えさせられるお話でし
た。共通しているのは、歴史の授業づくりについても、道徳についても、教員が上からの施策を無批判
にそのまま受け入れてしまうことが最も危険なことなのだと感じました。日々、多忙な中で立ち止まっ
て考え、教材研究に取り組まなければ流されてしまいそうで、自分自身、気を引き締めなければと感じ
ました。勉強不足であることを自覚して意欲的に情報収集しようと思いました(30代)。
(3)宮澤さんのお話は初めてうかがいました。とても分かりやすく「道徳科」の危険性を整理して下さ
いました。現場でも、同僚とどう語るのか、難しいと思っていましたが、よいヒントをいただきました。
本当に参加して良かったです(40代)。
(4)(倉持報告では)新学習指導要領、「改正」教育基本法の悪影響というか「狙い」が浸透してきたこ
とを実感した。地理も公民もとかく「愛国」、主体的とか深い学びという耳ざわりの良い言葉で実態を
隠しているため、一般市民の間には批判はおろか関心さえ生れない。こうして教員は孤立して弱体化さ
せられていく(60代)。
 これらの感想に見られるように、第36回中間研究集会の講演・報告は、市民や現職教員の要望に応え
る内容であったこと、関東都県歴教協の助力により、参加者の多い充実した集会となった。引き続き、
夏の京都に職場の仲間と友人を誘いあうことやレポートを持ち寄ることで、京都大会を成功させよう。