【声明】政府及び日本維新の会による歴史事実を否定する動きと教科書への政治介入に抗議する

By | 2021年8月19日

【声明】政府及び日本維新の会による歴史事実を否定する動きと教科書への政治介入に抗議する

 政府は、4月に日本維新の会議員から出された「従軍慰安婦」や「強制連行」「強制労
働」に関する質問主意書に対する答弁書を閣議決定しました。その内容は、「当時使われ
ていなかった『従軍慰安婦』という言葉を用いることは、軍により『強制連行』されたと
いう『誤解』を招くおそれがあるので、今後は慰安婦とする。さらに、朝鮮半島から日本
への戦時労働を『強制的に連行された』などとするのは、『募集』、『官斡旋』など様々
な経緯があり不適切で、これからは『徴用』という用語がふさわしい」などというもので
す。
 閣議決定された政府答弁書には4 つの重要な問題があります。1 つめは、ある事項につ
いての歴史用語を政府見解として決定し、他の用語で教科書に記述することを禁止するこ
とは、憲法の言論、学問・研究の自由を侵害していることです。なお、歴史研究の積み重
ねにより、政府見解とは別の意味で「従軍慰安婦」という用語は適切でないとされ、日本
軍「慰安婦」という用語を使用することが多くなっています。2つめは、「当時使われて
いなかった」との理由が的はずれであるということです。1941年から45年までの戦争を当
時は「大東亜戦争」と呼びましたが、現在の教科書では、太平洋戦争やアジア太平洋戦争
と表記されています。歴史用語は、研究の発展によって変化していくものです。3 つめは、
1993年8月に発表された「河野談話」では、慰安婦募集について軍の要請や官憲の関与を
認め、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。」と人権
蹂躙を認めています。現在の菅内閣も「河野談話」を認める立場ですが、今回の政府答弁
書は、それに矛盾しています。4つめは、「朝鮮半島出身の労働者の移入」を「強制連行」
ではなく「徴用」という用語を適切だとしたことです。日本政府は、1939年に、国策とし
て「朝鮮人労働者募集要項」を決定し、朝鮮総督府の行政機関も協力した募集や官斡旋が
行われました。これにより、炭鉱、鉱山などの重要産業部門に朝鮮人労働者が日本国内に
「移入」させられ、戦争末期の1944年9月から「国民徴用令」における動員が本格化しま
した。
 日本維新の会議員はその後も、衆議院予算委員会で答弁書に関する質問を行い、文科相
は「答弁書をふまえ、発行会社が訂正を検討する」と答弁しました。さらに日本維新の会
議員は、教科書検定規則の文部科学大臣による「記述の訂正」勧告を要求し、文科省は、
「従軍慰安婦」などの用語の使用は、教科書検定規則14条1項「学習する上の支障」にあ
たると答弁しました。
 また、複数の地方議会に、保守系勢力から「閣議決定で『不適切』とされた『従軍慰安
婦』『強制連行』『強制労働』を記述した教科書を採択しないこと」を求める要請が行わ
れています。今年3月に自由社中学校歴史教科書が検定合格したことにより、各地の教育
委員会で、中学校歴史教科書の採択を再度実施する動きもあります。文科省は5月18日に
教科書会社編集担当役員を招集し、閣議決定に基づく訂正申請を誘導するかのような「教
科書関係臨時説明会」を実施しました。埼玉県では閣議決定に関するリーフレット作成を
おこなうと教育長が答弁するなど、来年度使用の高校「歴史総合」の採択にも影響が現れ
ています。
 歴史教育者協議会は、戦前の軍国主義教育の反省から、事実に基づく歴史教育・社会科
教育を研究・実践してきました。教育の自由は、学問・研究の自由と不可分の関係にあり
ます。
 以上のことから、私たち歴史教育者協議会は、政府と日本維新の会による、歴史事実を
否定する動きと教科書への政治介入に断固抗議します。

                                 2021年7月30日 
                    一般社団法人 歴史教育者協議会 社員総会