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皆で学んだ「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」 歴教協第41回中間研究集会報告(ハイブリッド)

 1月8日(日)に「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」というテーマで、第41回中間研究集会をラパスホール
で実施しました。会場に42人、オンラインに71人の合計113人の参加があり、時宜にかなったテーマということ
もあり熱のこもった集会となりました。              
 

《講演について》
午前の講演では 山田朗さん(歴史教育者協議会委員長・明治大学)が「ウクライナ戦争と日中戦争、そして
現代日本の軍拡を考える―その類似性と危険性―」をテーマに日中戦争と比較してのウクライナ情勢と現代日本
における大軍拡と改憲の潮流について語ってくださいました。
前半の「類似性」では①1930年代の日本と現在のロシアはともに軍事大国であり侵略国、②「満州国」建国(1
931~32年)とクリミア併合(2014年)を「成功事例」と認識した、③一撃によって相手が降伏する、政権が崩壊
すると見た誤算、④長期戦化して一般市民の犠牲が拡大、⑤「戦争」と呼称せず、戦争の実態を国民に知らせな
い報道体制という5点をあげて言及しました。後半の「危険性」では①軍拡加速化、②新たな戦争、③残虐兵器使
用、④和平実現の困難性の4点について触れて、ウクライナ戦争は第3国(中立国・勢力)による和平仲介しか打
開の道はないと論じました。
「類似性」と「危険性」を指摘したうえで、今回の講演のヤマ場とも言うべき「現代日本における大軍拡と改憲
の潮流を許さない」ために現状をどのように分析、打開したらよいかの提言がありました。「台湾有事=日本有事」
論の喧伝により「防衛費増額賛成論」の増加、現実に2023年度防衛予算段階ですが1年で2兆円弱の増加の可能性
に触れ、中国との軍拡競争が「加速」する危険性を強調されました。同時に「スタンド・オフ防衛能力」は「敵基
地攻撃能力」へと転化、危険な新戦略の台頭も考えられると指摘されました。
 最後に、新しい安保3文書(国家安全保障戦略②国家防衛戦略③防衛力整備計画)の問題点を明らかにして、軍
拡・改憲の潮流を押し返すために?戦争の記憶の継承、②戦争の歴史と実態、軍拡の実態を知ること、③戦争に加
担しないという3点を力説、強調されました。

《報告について》
 午後は、午前の講演を受けて山本悦生さん(島根県歴教協、津和野町立津和野中学校)が「世界の”今”を授
業に―歴史学習の最後に取り上げたウクライナ侵攻―」、続けて中條克俊さん(歴教協副委員長、中央大学)が
「関東大震災/朝鮮人虐殺事件100年―関東大震災直後に何が起きたか」を報告してくださいました。
 山本さんは、2022年6月現在のウクライナ情勢から2時間構成の授業実践を報告しました。1時間目はロシア
のウクライナ侵攻の現状を確認して、2時間目は「ゼレンスキー大統領は2月24日の侵攻前に戻すまで抗戦すべ
きか、約20%を明け渡して停戦すべきか」という問いを提示して討論を深めることができたとのことでした。
 中條さんは、関東大震災100年にあたって9月1日は「防災の日」だけではなく「追悼の日」であることを忘れ
てはならないとして①朝鮮人虐殺事件②中国人虐殺事件③金子文子・朴烈事件④亀戸事件⑤福田村事件⑥大杉栄
虐殺事件(甘粕事件)を扱った授業実践について報告されました。

 講演、報告を受けて、会場並びにオンライン上での質疑応答がおこなわれ、テーマの重要性から実りある討議
ができ、兵庫大会への流れをつくることができました。

《アンケートから》
 アンケートには「時宜にかなった講師と報告者の人選でよかった」、「ウクライナをどうとらえるかというテ
ーマは、教員でなくとも参加しやすかった」、「市民の方の参加も多く、関心が高いことがわかった」、「ウク
ライナ情勢とあわせて関東大震災100年の報告もあってよかった」という声がありました。

1/10現在集計 よかった まずまずだった 不満だった
オンライン参加者 17人(85.0%) 3人(15.0%) 0人
会場参加者  6人(75.0%) 2人(25.0%) 0人
合計 23人(82.1%) 5人(17.9%) 0人

 

 

 

 

 

 

2022年度9月授業づくり講座 感想まとめ

 

1.講師平井敦子さんから
報告の機会を与えていただきありがとうございました。日常の授業というより、ちょっとだけ特
別な授業ではありますが、みなさんの疑問に答えながら、自分でも実践を客観的にみることが少し
できたように思います。
 余談ですが、先日地理の授業で、中2の生徒に「東京」に関してテレビを毎日見てるかな?週刊
誌など雑誌を買っているかな?ときくと、本当に今はそういうことをしていない。情報は、全国、
全世界から発信されるYou Tubeなど。一昔まえなら、新聞社や出版社名、テレビ局、地名のいろい
ろを地図帳で発見すると「あ、知っている!」と親近感がわくのですが、この反応もとても低くな
ってきました。
 常に、生徒にじぶんごとにしていくには、こちらも、毎回、考えなければなりません。日々、考
えること、これが授業づくりだなあ、と思います。

2.参加者の感想
<高校教員(元も含む)>
〇私は今年度より沖縄で教育活動をしているのですが、平井さんのような「沖縄」に移住するぞ!
 は可能か考えてしまいました。北海道と沖縄では飛び地という点で共通していますが、沖縄では
 沖縄出身者が多いし、開拓地ではない。うまく真似て実践できないものか考えながら聞いていま
 した。
〇「戦時下の模擬家族いいよ」と聞いていたので、どうしても参加したい!と思っていた講座でし
 た。模擬家族だけではなく「我が家の20世紀年表」、「よし移住するぞ」etc。あっという間
 の3時間でした。戦争は重いテーマですが、年表や模擬家族だったら高校生だって大人だって、暮
 らしがベースなので分かりやすく学び今を見つめる目を自身の中に育てることが出来そうです。
 目の前にいる高校生verにアレンジしてみようと思います。

<中学校教員>
〇今回の実践報告を受けて、当時の歴史の当事者が自分だったらどうするのか?という問い立て、「
 自分ごと」として学ぶ社会科学習の実践は、とても新鮮で印象に残るものでした。「自分ごと」に
 捉える授業の実践、私自身のこれからの授業づくりのヒントにしていきたいです。
〇平井先生の授業実践①家族100年史、②北海道の開拓とアイヌ、③模擬家族は「生徒が「自分事」で
 きる」が共通するキーワードになると思いました。次に、平井先生の授業実践を私自身の授業実践
 にいかすことができないか、考えてみました。その上でも、今日の授業は生徒にとって「自分事」に
 なっていたかと問い直していきたいです。
〇平井さんの実践のお話は大会でお聞きしたり、歴史地理教育で読んだりしていますが、今日は内容を
 さらに掘り下げ、さらには授業づくりに対する考えまでも聞くことができ、あっという間の3時間で
 した。
  社会を上から動かしてきた人々による歴史ではなく、この社会の基盤になる部分から動かしてきた
 民衆、そうせざるを得なかった人々に心を寄せる歴史観が、現代の社会を見つめ、「自分がその立場
 だったら・・」というエンパシーをもたせることにつながるということに、とても納得しました。
 
<小学校教員>
〇今回の平井先生の実践を聞いて、工夫次第で「自分事にする」授業が実現できるのだということに気
 づかされました。簡単にできることではありませんが、もう少し考えてみよう、頑張ってみようと思
 うことができ、それだけでも今回の講座に参加できてよかったと思います。

<特別支援学校教員(元も含む)>
〇北海道の移住も屯田兵くらいしか今まで授業で扱ったことはあまりありませんでしたが、実際に地図
 や写真をみるとどれだけ開墾が大変だったかとてもよく分かりました。そして開墾を進めるにあたっ
 てそこに生活の基盤を持っていたアイヌの人々の悲しみ・辛さをはじめて理解することができました。
 社会科の役割として地理・歴史・公民のいずれも「遠くのできことではなく、自分が生きている今と
 深く関わっているということ、そして、決まっていないこれから先の未来を学んだことからどう選択
 するのかを真剣に考えてほしいと伝えること」ではないかと強く感じました。
〇特に、授業の内容を生徒が「自分事」として学ぶとはどういうことか。そこを理解することが平井さ
 んの授業論の核心と思いました。アイヌの歴史について構造化された授業 自分事として学ぶことが
 可能な授業 ―これは、沖縄の歴史、在日朝鮮人の歴史、原発立地地域の歴史等 テーマをおきかえ
 てもできるのではないか。その可能性を平井さんの授業実践から感じました。
〇「北海道に移住する模擬家族」にしても「戦時下の模擬家族」にしても、歴史を「自分ごと」として
 とらえることができて、かつグループでワイワイと言い合いながらできるので、生徒たちが社会科が
 好きになるわけだと思いました。
〇生徒が「自分事」に感じる授業をするためには、教師が「自分事」に学ぶことの重さや豊かさを実感
 しなければという平井さんの言葉は、もう退職して久しい自分にも、高校生平和ゼミナールの活動を
 通じて、生徒に伝えたいことがあるので、これからも「自分事」として学んでいかなければ…と思い
 ました。

<大学・大学院教員>
〇決まりきった授業のやり方は教えることができます。だが、どう教材を発掘するのか、それをどう料
 理するのか、どう「自分ごと」にさせるのか。そのセンスの部分は教えることができません。だから、
 センスを磨きたいのです。「主体性」ってそういうことなんだよね。
〇今回、zoomのブレイクアウトルームを使った場面があった。私と同じメンバーだったのは、大学二年
 生が二名、大学三年生が1名であった。二年生は、まだ教職の授業を始めたばかりと言っており、大
 学三年生はまだ模擬授業を始めたばかりと話していた。社会科はどうしても暗記科目と認識されてし
 まう、という話題が話し合いの最中に出た。社会科を暗記科目と捉える認識は根強く残っている。こ
 の問題と向き合うことも我々の課題と言えよう。
<学生>
〇そのため、平井さんの実践の中にもあった、「さあ、北海道に移住するぞ!」は自分の授業と比較し
 たり、知見を広げたりしながら見させていただくことができました。北海道の授業をする上で、北海
 道の歴史を土台として学ばないわけには行かないことをさらに深く感じることができました。授業作
 り講座で学んだことを今後にも活かせるよう、また私もたくさん勉強していきたいです。
〇今回の講座で一番感じた事は、何を伝えることを目的に授業を行うのかを明確にすることの大切さで
 す。
〇今回の講座において「自分事として考えさせる」ということの難しさだったり、時間の使い方だった
 り、学ぶことがとても多くありました。写真1枚1枚に対する意味もしっかりとあり、ただ提示するの
 では意味がないということも改めて理解することができました。
〇今回の講座に参加して、現在、教師として現場で仕事をしている方から実際にそこで行われている授
 業実践を聞いて学ぶことは、教職の勉強をする上でとても大切なことだと感じました。
〇私が今回の講座の3つキーワードを挙げるとすれば、それは「自分ごと、模擬選挙、模擬家族」です。
〇遠い過去のことや離れた地で起きていることを自分事として考えることは容易なことではありません
 が、教師が意識して授業を作ることで手助けができると知りました。先達の良い授業を取り入れ、自
 分の教師としての力に結びつけたいと考えています。

3.司会より
  学生28名を含む48名という非常に多くの方が参加してくださいました。今回は、札幌で中学校の教
 員をされている平井さんが講師ということもあり、北海道からの参加者も非常に多かったです。学生の
 の参加者もオンラインでの開催を始めてから増えてきています。年齢、校種、地域と参加者の広がりを
 見ると、対面で話せない寂しさやもどかしさはありながらも、オンラインだからこその良さも現れて
 きたように感じています。
  今回の講座では、「主権者としての生徒を育てる」、「生徒が自分事として考えられる授業をする」
 ことをテーマに大きく3つの実践を紹介していただきました。中学校での実践ではありましたが、小
 学校に務めている私にとっても、生かせること、考えさせられることが多く、校種や教科を問わず、
 大事なことをたくさん学ぶことができた3時間になったと思います。
  参加者が多かったことを踏まえ、初の試みでしたが、ブレイクアウトルームを使用した交流会の時
 間も設けました。学生からベテランの教員の型まで、幅広い視点や価値観での意見交流ができ、こち
 らも有意義な時間になったという感想を多数いただくことができました。今回はグループ分けを完全
 にランダムにしてしまいましたが、次回はグループ分けや時間配分も工夫することでよりよい交流の
 場へと改善できそうでした。司会、運営の課題として、次回に生かしたいと思います。
  最後に、お忙しい中、講師を引き受け、素敵な実践を提供していただきました平井先生、改めてあ
 りがとうございました。各参加者、そして、それぞれが受け持つ子供たちへと今回の学びが還元され
 るよう、一参加者として、私も努力していきたいと思います。11月講座もオンラインにて開催予定
 です。こちらも多くの方のご参加をお待ちしています。