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2022年度9月授業づくり講座 感想まとめ

 

1.講師平井敦子さんから
報告の機会を与えていただきありがとうございました。日常の授業というより、ちょっとだけ特
別な授業ではありますが、みなさんの疑問に答えながら、自分でも実践を客観的にみることが少し
できたように思います。
 余談ですが、先日地理の授業で、中2の生徒に「東京」に関してテレビを毎日見てるかな?週刊
誌など雑誌を買っているかな?ときくと、本当に今はそういうことをしていない。情報は、全国、
全世界から発信されるYou Tubeなど。一昔まえなら、新聞社や出版社名、テレビ局、地名のいろい
ろを地図帳で発見すると「あ、知っている!」と親近感がわくのですが、この反応もとても低くな
ってきました。
 常に、生徒にじぶんごとにしていくには、こちらも、毎回、考えなければなりません。日々、考
えること、これが授業づくりだなあ、と思います。

2.参加者の感想
<高校教員(元も含む)>
〇私は今年度より沖縄で教育活動をしているのですが、平井さんのような「沖縄」に移住するぞ!
 は可能か考えてしまいました。北海道と沖縄では飛び地という点で共通していますが、沖縄では
 沖縄出身者が多いし、開拓地ではない。うまく真似て実践できないものか考えながら聞いていま
 した。
〇「戦時下の模擬家族いいよ」と聞いていたので、どうしても参加したい!と思っていた講座でし
 た。模擬家族だけではなく「我が家の20世紀年表」、「よし移住するぞ」etc。あっという間
 の3時間でした。戦争は重いテーマですが、年表や模擬家族だったら高校生だって大人だって、暮
 らしがベースなので分かりやすく学び今を見つめる目を自身の中に育てることが出来そうです。
 目の前にいる高校生verにアレンジしてみようと思います。

<中学校教員>
〇今回の実践報告を受けて、当時の歴史の当事者が自分だったらどうするのか?という問い立て、「
 自分ごと」として学ぶ社会科学習の実践は、とても新鮮で印象に残るものでした。「自分ごと」に
 捉える授業の実践、私自身のこれからの授業づくりのヒントにしていきたいです。
〇平井先生の授業実践①家族100年史、②北海道の開拓とアイヌ、③模擬家族は「生徒が「自分事」で
 きる」が共通するキーワードになると思いました。次に、平井先生の授業実践を私自身の授業実践
 にいかすことができないか、考えてみました。その上でも、今日の授業は生徒にとって「自分事」に
 なっていたかと問い直していきたいです。
〇平井さんの実践のお話は大会でお聞きしたり、歴史地理教育で読んだりしていますが、今日は内容を
 さらに掘り下げ、さらには授業づくりに対する考えまでも聞くことができ、あっという間の3時間で
 した。
  社会を上から動かしてきた人々による歴史ではなく、この社会の基盤になる部分から動かしてきた
 民衆、そうせざるを得なかった人々に心を寄せる歴史観が、現代の社会を見つめ、「自分がその立場
 だったら・・」というエンパシーをもたせることにつながるということに、とても納得しました。
 
<小学校教員>
〇今回の平井先生の実践を聞いて、工夫次第で「自分事にする」授業が実現できるのだということに気
 づかされました。簡単にできることではありませんが、もう少し考えてみよう、頑張ってみようと思
 うことができ、それだけでも今回の講座に参加できてよかったと思います。

<特別支援学校教員(元も含む)>
〇北海道の移住も屯田兵くらいしか今まで授業で扱ったことはあまりありませんでしたが、実際に地図
 や写真をみるとどれだけ開墾が大変だったかとてもよく分かりました。そして開墾を進めるにあたっ
 てそこに生活の基盤を持っていたアイヌの人々の悲しみ・辛さをはじめて理解することができました。
 社会科の役割として地理・歴史・公民のいずれも「遠くのできことではなく、自分が生きている今と
 深く関わっているということ、そして、決まっていないこれから先の未来を学んだことからどう選択
 するのかを真剣に考えてほしいと伝えること」ではないかと強く感じました。
〇特に、授業の内容を生徒が「自分事」として学ぶとはどういうことか。そこを理解することが平井さ
 んの授業論の核心と思いました。アイヌの歴史について構造化された授業 自分事として学ぶことが
 可能な授業 ―これは、沖縄の歴史、在日朝鮮人の歴史、原発立地地域の歴史等 テーマをおきかえ
 てもできるのではないか。その可能性を平井さんの授業実践から感じました。
〇「北海道に移住する模擬家族」にしても「戦時下の模擬家族」にしても、歴史を「自分ごと」として
 とらえることができて、かつグループでワイワイと言い合いながらできるので、生徒たちが社会科が
 好きになるわけだと思いました。
〇生徒が「自分事」に感じる授業をするためには、教師が「自分事」に学ぶことの重さや豊かさを実感
 しなければという平井さんの言葉は、もう退職して久しい自分にも、高校生平和ゼミナールの活動を
 通じて、生徒に伝えたいことがあるので、これからも「自分事」として学んでいかなければ…と思い
 ました。

<大学・大学院教員>
〇決まりきった授業のやり方は教えることができます。だが、どう教材を発掘するのか、それをどう料
 理するのか、どう「自分ごと」にさせるのか。そのセンスの部分は教えることができません。だから、
 センスを磨きたいのです。「主体性」ってそういうことなんだよね。
〇今回、zoomのブレイクアウトルームを使った場面があった。私と同じメンバーだったのは、大学二年
 生が二名、大学三年生が1名であった。二年生は、まだ教職の授業を始めたばかりと言っており、大
 学三年生はまだ模擬授業を始めたばかりと話していた。社会科はどうしても暗記科目と認識されてし
 まう、という話題が話し合いの最中に出た。社会科を暗記科目と捉える認識は根強く残っている。こ
 の問題と向き合うことも我々の課題と言えよう。
<学生>
〇そのため、平井さんの実践の中にもあった、「さあ、北海道に移住するぞ!」は自分の授業と比較し
 たり、知見を広げたりしながら見させていただくことができました。北海道の授業をする上で、北海
 道の歴史を土台として学ばないわけには行かないことをさらに深く感じることができました。授業作
 り講座で学んだことを今後にも活かせるよう、また私もたくさん勉強していきたいです。
〇今回の講座で一番感じた事は、何を伝えることを目的に授業を行うのかを明確にすることの大切さで
 す。
〇今回の講座において「自分事として考えさせる」ということの難しさだったり、時間の使い方だった
 り、学ぶことがとても多くありました。写真1枚1枚に対する意味もしっかりとあり、ただ提示するの
 では意味がないということも改めて理解することができました。
〇今回の講座に参加して、現在、教師として現場で仕事をしている方から実際にそこで行われている授
 業実践を聞いて学ぶことは、教職の勉強をする上でとても大切なことだと感じました。
〇私が今回の講座の3つキーワードを挙げるとすれば、それは「自分ごと、模擬選挙、模擬家族」です。
〇遠い過去のことや離れた地で起きていることを自分事として考えることは容易なことではありません
 が、教師が意識して授業を作ることで手助けができると知りました。先達の良い授業を取り入れ、自
 分の教師としての力に結びつけたいと考えています。

3.司会より
  学生28名を含む48名という非常に多くの方が参加してくださいました。今回は、札幌で中学校の教
 員をされている平井さんが講師ということもあり、北海道からの参加者も非常に多かったです。学生の
 の参加者もオンラインでの開催を始めてから増えてきています。年齢、校種、地域と参加者の広がりを
 見ると、対面で話せない寂しさやもどかしさはありながらも、オンラインだからこその良さも現れて
 きたように感じています。
  今回の講座では、「主権者としての生徒を育てる」、「生徒が自分事として考えられる授業をする」
 ことをテーマに大きく3つの実践を紹介していただきました。中学校での実践ではありましたが、小
 学校に務めている私にとっても、生かせること、考えさせられることが多く、校種や教科を問わず、
 大事なことをたくさん学ぶことができた3時間になったと思います。
  参加者が多かったことを踏まえ、初の試みでしたが、ブレイクアウトルームを使用した交流会の時
 間も設けました。学生からベテランの教員の型まで、幅広い視点や価値観での意見交流ができ、こち
 らも有意義な時間になったという感想を多数いただくことができました。今回はグループ分けを完全
 にランダムにしてしまいましたが、次回はグループ分けや時間配分も工夫することでよりよい交流の
 場へと改善できそうでした。司会、運営の課題として、次回に生かしたいと思います。
  最後に、お忙しい中、講師を引き受け、素敵な実践を提供していただきました平井先生、改めてあ
 りがとうございました。各参加者、そして、それぞれが受け持つ子供たちへと今回の学びが還元され
 るよう、一参加者として、私も努力していきたいと思います。11月講座もオンラインにて開催予定
 です。こちらも多くの方のご参加をお待ちしています。

歴教協編『明日の授業に使える中学校社会科 公民[第2版]』(大月書店)

 

「明日の授業に使える中学校社会科」シリーズ第2版のうち、本年3月に刊行した「歴史」に続
き「公民」が刊行となりました。
 これまでの『社会科の授業』シリーズで蓄積された授業アイディアを踏まえつつ、学習指導要
領の改訂にあわせて内容・情報を全面リニューアル。
 SDGsや新型コロナ感染症、ウクライナ戦争と核兵器廃絶の動き、女性の権利と性の多様性、ヘ
イトスピーチなど、最新の話題も盛り込んで、主体的な学びと主権者教育に役立つテーマを取り
揃えました。
 旧版と同じく専用サイト「デジタル資料集」に登録することで資料画像やワークシート案をダ
ウンロードして使えます。ぜひご活用ください。

歴史教育者協議会(歴教協) 編(編集委員 大野一夫、石戸谷浩美、岩田彦太郎、平井敦子)
『明日の授業に使える中学校社会科 公民[第2版]』
大月書店刊 2022年6月20日発売 ISBN978-4-272-40869-6
B5判200ページ 定価3,300円(本体3,000円+税)
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b605387.html

目次
シリーズ刊行にあたって
問いに向きあい、未来を創る主権者育成を
デジタル資料集の使い方

Ⅰ 現代社会と私たち

1 私の未来予想図と現代社会
2 持続可能な社会に向けて
3 現代社会の特色とわたしたち①
4 現代社会の特色とわたしたち②
5 私たちの生活と文化
6 多文化共生の実現のために
7 「家族」で考える社会と法
8 社会の合意をつくる?効率と公正の観点から
発展学習 「自分ごと」として想像力を重視した学習活動を

Ⅱ 個人の尊重と日本国憲法

1 人権の歴史
2 立憲主義と日本国憲法
3 前文の理念と基本原理
4 国民主権と天皇の地位
発展学習 国民主権と現代の政治
5 平和主義の思想
6 憲法9条と自衛隊
7 日本の平和と日米安全保障条約
8 国際社会の平和と日本の役割
発展学習 集団的自衛権と米軍基地
9 私が個人として尊重されること
10 差別を解消し平等な社会を実現するために
11 アイヌの人びとの民族としての誇りを守る
12 私はやってない!?自由権と現代社会①
13 精神の自由は守られているのか?自由権と現代社会②
14 教育を受ける権利は保障されているのか??社会権①
発展学習 ヘイトスピーチを考える
15 一人で街へ出たい?社会権②
16 人権保障を確かなものに
17 「象のオリ」から考える公共の福祉
18 BLMから考えるこれからの人権保障
19 子どもの権利条約
20 情報化社会と人権
発展学習 沖縄の基地被害から考える「軍隊の存在」と人権侵害

Ⅲ 現代の民主政治と社会

1 民主主義と政治
2 政治参加と選挙
3 政党のはたらきと民意
4 マスメディアと世論
5 選挙の課題とさまざまな政治活動
発展学習 私の代表を議会に送ろう?○○中学校模擬選挙
6 国会で決まることと私たち
発展学習 私たちが国民の代表だ?1時間でできるかんたん模擬国会
7 行政を監視する国会
8 内閣の仕事と私たち
9 行政の役割と行政改革
10 裁判を受ける権利と裁判所
11 裁判の種類と人権
12 司法制度改革?裁判員制度と司法の課題
発展学習 司法を市民のものに 模擬裁判と国民審査
13 三権の抑制と均衡
14 私たちの生活と地方自治
15 地方自治のしくみ
16 地方財政のしくみと課題
発展学習 地方自治への参加?防災ハザードマップを利用したフィールドワークを生かした災害図上訓練(DIG学習)

Ⅳ 私たちの暮らしと経済

1 私たちの暮らしと経済
2 私たちの消費生活
3・4 消費者の権利
5 消費生活を支える流通
6 市場経済のしくみ
7 価格の決まり方とはたらき
8 資本主義経済と企業
9 株式会社のしくみ
10 企業の社会的責任(CSR)
発展学習 株式会社・企業・起業
11 貨幣とは何か?
12 私たちの生活と金融機関
13 景気と金融政策
14 労働の意義と労働者の権利
15 働きやすい職場をつくる
16 外国人労働者
発展学習 こんなときどうする? 労使交渉
17 私たちの生活と財政
18 政府の役割と財政の課題
19 社会保障のしくみ
20 少子高齢化と財政
21 公害の防止と環境の保全
22 グローバル化する日本経済
23 豊かさと経済
発展学習 日本経済の課題

Ⅴ 地球社会と私たち

1 国際社会における国家
2 国際協調と領土問題
3 国際連合のしくみと役割
4 地域主義の動きと東アジア
5 地球環境問題
6 資源・エネルギー問題
7 公正な社会のために?貧困問題
8 新しい戦争?平和の実現のために
9 世界の人びとと平和をつくる?核抑止力と核兵器禁止条約

 

 

2022年度6月授業づくり講座のまとめ

◆テーマ:「6年生の憲法学習-新学習指導要領下で憲法をどう学ぼうか-」
◆講 師:佐藤幸二さん(埼玉公立小学校教員)
◆参加者:18名 小学校6名 中学校3名 高校3名 特支3名 学生 3名

◆佐藤幸二さんからのコメント
講座での発言、その後の感想を読むにつけ、小学校社会科が抱える問題点を多くの方々と共有できたこ
と、その問題を小学校教員のみならず中・高教員、さらに大学で学ぶ「未来の教師」の方々と検討する
大切さを改めて実感しました。学校現場は多忙さを極め、追い打ちをかけるようなコロナ禍の対応は教
員の「教えること」への制約をいまだに加えています。子どもたちが学ぶ内容を「自分事」と受け止め、
自分の思いや願いを言葉に発して皆で真理を探究する授業づくりが大切です。
普段の生活から「平和」の中身を「自分事」としてとらえつつ、連日報道されるウクライナの「地下壕
で爆音に怯え、手にするゲームで恐怖を紛らわす男の子、缶詰に指を入れてすくいながら空腹を満たす女
の子」の姿を目にした時、私たちの子どもたちは「平和」とはどういった社会であるか、それを壊すもの、
それを守るものは何かをあらためて考えてくれるのではと思います。アプローチこそ違え、憲法や平和を
子どもと共に考える授業を今後も創造・実践したいものです。   

◆参加者の感想
○本日の佐藤さんのお話、大変興味深く聞かせていただきました。冒頭の井上陽水のことなど、佐藤さ
んのちょっと後輩の私には、とても懐かしいものでした。
中学校教員の私も、小学6年の社会科が政治・憲法→歴史の順になったことで、現場はご苦労されて
いると聞いていました。そのなかで、憲法を学ぶことで、その後の歴史を考える物差しになるという、
どなたかのご発言には「なるほど、そういう考え方もあるのか」と思いました。
しかしながら、憲法三原則が歴史的背景抜きに学ぶことは出来ないと思います。
佐藤さんは、平和主義の学習に沖縄戦をとりあげて「へいわってすてきだね」とからめて、平和とは何
かを考えさせる取り組みをされてとてもいいなあと感じましたが、やはり歴史を先に学んでいくほうが
二度手間にならなくてよいかなとも思います。
中学校では、歴史を踏まえて現憲法の意義を扱いますし、人々のたたかいの末勝ち取った「憲法は国
家権力を縛るもの」という点も理解しやすいと思います。(小学校では扱わなくても、中学校でも十分
にできているか課題でもありますが)なにより「人権」や「民主主義」が「すでにあるもの」として学
んでも、三原則の大切さが印象に残らないような気がします。
「住民が地域の主人公」「国民が主人公」という憲法の原則を、実際にたたかっている人々から学ば
せたいと思います。(地理でも歴史でも)小学校で具体的な地域や時代に即してイメージを持たせられ
たら、中学校としてはやりやすいと思っています。小中の実践交流も大事ですね。いろいろと触発され
たお話でした。佐藤さん、本当にありがとうございました。(Iさん)

○6年生の最初におこなった「鬼滅の刃をとおして、日本社会の歴史やしくみをのぞく」授業は、児童
の流行や文化を把握した上で教材化をし、初めて出会う先生だったからこそ、児童の興味関心を高めら
れたと考えた。日常から教材になるものを探して、授業実践をすることの大切さを感じました。
 新学習指導要領の下での憲法学習は、学校現場でも混乱を招いています。佐藤先生もおっしゃってい
たように、憲法学習が先に来ると、日本国憲法が歴史の中でどのように位置づけられたものが分からな
いため、歴史学習との結びつきが浅くなり、理解を深められないと考えました。さらに、日本国憲法は
とっつきにくいため、いかに言葉をかみ砕いてわかりやすく指導するかがより大事であることを学びま
した。
 「平和」を身近に考えることについては、ウクライナ戦争のこともあってか、私自身が「平和とは、
戦争のない状態」という固定観念で考えていたことに気づかされました。普段の生活でやりたいことが
不安なくできる状態も「平和」の1つであることを学び、もう1度「平和」とはどういった社会であるか、
今の自分は果たして「平和」な状態と言えるのかと問い直すきっかけとなりました。日本国憲法の学習
を軽視する反面、国防意識を重視するような内容も含まれていることは、歴史の中の憲法の過程を全く
無視した、極めて危険な状態です。中高では単なる暗記だけに終わらず、戦争の惨禍を繰り返さないた
めにも、9年間(+3年間)を広く見通して、深め続けなければならないと考えました。(Kさん)
○今回、初めて授業づくり講座に参加させて頂きました。私は高校の教員をしているので、今回の佐藤
幸二さんの小学校での憲法の授業についてのご報告は、いろいろな点で新鮮でした。普段接している高
校生を見ていて、小学校以来憲法については、いろいろなことを習ってきているだろうと思っているの
ですが、その実際については、なかなか知る機会がありませんでした。その意味で、今回のご報告には
いろいろ目を開かれることがありました。
 まず、小学校でこれだけ系統的に憲法学習がおこなわれていること、三原則はやはり必ず取り上げる
一方、立憲主義については必ずしも教えないこと、従来は歴史学習が6年生の前半にあって、戦争の惨
禍を知って、憲法の平和主義を学ぶため、その意義が自然に理解できるようにカリキュラムが構成され
ていたこと、ところが、最近の教科書ではこれが逆転して憲法学習の後に歴史学習が来て、平和主義と
戦争体験の繋がりが子どもに見えにくくなっていることなど、興味深いと同時にとても心配なことを具
体的な現場の事情を踏まえて語って頂き、よく理解できました。歴史学習を先に学ぶべきという佐藤さ
んの提案が業者テストとの関係で若い同僚の方々に受け入れられないというような話は、学力テストが
全国一斉実施になって以来、小学校現場が大きく変わった、という以前からお聞きしている話に重なる
重要な問題と思われました。
 ただ、一方で実際に憲法を先に学んでいることで、歴史学習で戦争について学ぶ際にその意義を自覚
して子どもが勉強できるという利点もあるとの指摘は、やはり授業してみないと実際のことはわからな
いということを改めて確認できました。憲法の学習を先にやらざるを得ないとしてもそれを前向きにと
らえて、次の歴史学習の後、再度憲法について平和主義を中心に学び直すというやり方もあるのだろう
と思いました。こうした点は社会科が解体されて科目別にバラバラに歴史や公民学習をせざるを得ない
高校でも取り入れたい授業の在り方だと思いました。例えば、十五年戦争の学習の冒頭に、不戦条約を
取り上げて日本国憲法の平和主義に繋がることを最初に学んで、それがどのような戦争体験から生まれ
てきたかをテーマに戦争の歴史を学ぶというような展開が想定できるのではないかと思いました。(W
さん)
○佐藤先生の憲法の授業実践について、特に印象に残ったのは絵本を用いて生徒一人一人の「平和」を
考えさせる試みです。「平和」という言葉は「戦争がない」という状態を指すだけでなく、友達と話し
たり、家族とご飯を食べたりする日常が「平和」であると捉えなおすことはとても重要なことだと思い
ました。「平和」だからこそ、自身の楽しかったり、嬉しかったりする瞬間が守られていると認識する
ことで、「平和」という言葉と日常生活がより結びつけやすくなると思います。そのような認識が、自
身の「平和」が脅かされそうな時に抗議の声を上げることや、現代社会が置かれている状況が本当に「
平和」であるのか問い直すきっかけになると思いました。「平和」を学ぶことは、自分や自分の周りの
人々を大切にすることを学ぶことでもあると考えさせられた講座でした。ありがとうございました。
(Rさん)
○正直に言いますと、これまでは小学校の先生の実践報告を「参考」としてしか捉えていませんでした。
中学校や高校の授業に活かせることは何か、といった感覚で聴いていることが多かったです。しかし、
この4月から小学校に配属されたので、今回は全てを聞き逃さないように、そして、今の授業に活かせ
ることを探そうと、課題意識を持って参加しました。
 教科書がいろいろな意味で変わってきているなか、佐藤幸二さんは歴史と憲法の結びつきを薄くしな
いよう、授業の導入を工夫したり、歴史を学んだ上で、憲法について考えることができるよう仕掛けを
したりしていました。また、『鬼滅の刃』を年度当初の社会科の授業で扱い、子どもたちの関心をひき
つけようとしている点が、本当に子ども想いの授業で良いなと思いました。そして、佐藤さんは、子ど
もが書いた絵を許容したり、子どもの関心事を意識したりと、子ども想いの先生だなと感じました。
 今回のお話のなかで得た情報として、今後の参考になりそうなのが、「単元の入れ替え」についてで
す。いろいろな場でお話を聞いていたからこそ、教科書の使用方法や単元構成、授業テーマの扱い方は、
厳しいものだと感じていました。しかし、学習指導要領で指示がない限り、学校裁量で、単元の入れ替
えや工夫はしても良いことになっていることを知ることができました。これによって、少し気持ちが楽
になりました(あの後、学習指導要領の総則でそのことに触れる文言を見つけました)。小学校では市
販のテストを使う関係で、大幅な単元の入れ替えはできません。それでも、前後を入れ替える程度のも
のであれば、自由がきくということが分かりました。4年生の社会科でも単元の順番に疑問を感じてい
たので、堂々と入れ替えることができます。
 今年度は、3、4年生の社会科専科になりました。地域学習など、私がこれまで勉強してこなかった
分野を扱っており、毎日授業をつくるのに、精一杯です。また、中学や高校と違って、小学生は一つ一
つ丁寧にステップを踏む必要があるので、そこでも難しさを感じます。そんななか、佐藤幸二さんの授
業づくりの視点と、寛容な姿勢が、とても勉強になりました。
 また疑問として、6年生の段階で学ぶ「歴史」とはどのようなものなのか。6年生の歴史は、どのよう
な扱い方をすれば良いのかということが気になりました。気になるテーマでもありますので、またいろ
いろな方と深めていきたいです。もし自分が、6年生を担当することになったら、どのような授業展開
をしようか、と考えています。分からないことだらけの初任者で、毎日乗り越えるだけで精一杯ですが、
やはり、この授業づくり講座に参加して良かったなと思いました。子ども想いの授業づくりを私も心が
けたいです。(Yさん)                              
○小学校での憲法学習について、新学習指導要領になっての授業実践をとても興味深く聴くことができ
ました。歴史学習と政治学習などの公民的な分野の教える順番が変わったことで現場の教員もどのよう
に教えていくかで悩んでいる状況があることを知りました。その中で、これほどの実践が行えているこ
とは、どんなこともやってみなければ新しい授業は見えてこないのだなと授業づくりの面白さを感じま
した。
 また、その時々の子ども達の流行りや身近な出来事を取り入れながら、子どもを社会科の授業へと引
き込む導入などは自分も参考にしていきたいです。ありがとうございました。(Hさん)