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歴教協編『明日の授業に使える中学校社会科 地理[第2版]』(大月書店)

「明日の授業に使える中学校社会科」シリーズ第2版、最終巻となる「地理」が刊行となりました。
歴史・公民の刊行からやや間が空いてしまいましたが、無事にシリーズ完結となります。

歴教協の授業書シリーズで蓄積された実践的な授業アイディアを踏まえつつ、学習指導要領の改訂に
あわせて内容・情報を全面リニューアル。SDGsや防災教育との連動、ウクライナ戦争や新型コロナ
感染症といった最新のテーマも盛り込んだ充実の内容です。
旧版と同じく専用サイト「デジタル資料集」に登録することで資料画像やワークシート案を
ダウンロードして使えます。ぜひご活用ください。

歴史教育者協議会(歴教協) 編(編集委員 大野一夫、石戸谷浩美、岩田彦太郎、平井敦子)
『明日の授業に使える中学校社会科 地理[第2版]』
大月書店刊 2023年2月15日発売 ISBN978-4-272-40867-2
B5判208ページ 定価3,300円(本体3,000円+税)
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b619016.html

目次

シリーズ刊行にあたって
地域の課題と向きあう主権者を育てる地理学習を
デジタル資料集の使い方

Ⅰ 世界のすがた

1 世界の人びと(1)さまざまな民族衣装
2 世界の人びと(2)暑い地域と乾燥した地域の人びとの暮らし
3 世界の人びと(3)寒い地域と高山地域の人びとの暮らし
4 世界の人びと(4)温暖な地域と南太平洋の暮らし
5 世界の民族と宗教
6 地球儀と世界地図から見た世界.緯度と経度・時差・いろいろな世界地図
7 世界の自然(1)地形
8 世界の自然(2)気候
9 世界の国ぐに(1)こんな国知ってますか?
10 世界の国ぐに(2)世界いろいろベスト5
発展学習 世界の子どもたちは、今(1)働かされる子どもたち
発展学習 世界の子どもたちは、今(2)劣化ウラン弾に苦しむ子どもたち
発展学習 人びとの生活と環境(調べ学習)

Ⅱ 世界の諸地域

1 アジアの国ぐに(1)朝鮮半島 「近くて遠い国」韓国と北朝鮮
2 アジアの国ぐに(2)中国 ①身近な中国・広い中国
3 アジアの国ぐに(2)中国 ②14.1億人が暮らす国
4 アジアの国ぐに(2)中国 ③躍進する中国経済
5  アジアの国ぐに(3)東南アジア 躍進するASEAN
6 アジアの国ぐに(4)インド(南アジア)
7 アジアの国ぐに(5)西アジアと中央アジア
8 アジアの国ぐに(6)イスラム教を信じる人びと
9 アジアの国ぐに(7)アジア州の課題にみんなで立ちむかう
10 ヨーロッパの国ぐに(1)ヨーロッパを広く見る
11 ヨーロッパの国ぐに(2)ドイツ
12 ヨーロッパの国ぐに(3)フランス
13 ヨーロッパの国ぐに(4)北ヨーロッパ
14 ヨーロッパの国ぐに(5)EUの役割
15 ヨーロッパの国ぐに(6)EUのこれから
16 ヨーロッパの国ぐに(7)ロシア連邦と周辺の国ぐに
17 北アメリカの国ぐに(1)アメリカ合衆国①広がるアメリカ
18 北アメリカの国ぐに(1)アメリカ合衆国②世界に影響を与えるアメリカの農業
19 北アメリカの国ぐに(1)アメリカ合衆国③世界に影響するアメリカの工業
20 北アメリカの国ぐに(1)アメリカ合衆国④豊かな国の貧困・アメリカの素顔
21 北アメリカの国ぐに(2)中米 軍隊を捨てた国コスタリカ
22 南アメリカの国ぐに
23 アフリカの国ぐに(1)アフリカ州の自然環境と歴史
24 アフリカの国ぐに(2)アフリカ州の産業の変化とこれから
25 オセアニアの国ぐに(1)太平洋の島々
26 オセアニアの国ぐに(2)オーストラリア
発展学習 ビキニ水爆被災事件とマーシャル諸島の人びと
発展学習 「世界の国調べ」新聞と大使館への手紙
発展学習 プラスチック汚染問題とSDGs

Ⅲ 日本のすがたと身近な地域

1 日本の領域
2 日本ってどんな国(1)日本の地形
3 日本ってどんな国(2)日本の気候
4 日本ってどんな国(3)日本の地震・火山災害
5 日本ってどんな国(4)日本の気象災害
6 日本ってどんな国(5)地図を読む
7 日本ってどんな国(6)身近な地域を歩く

Ⅳ 日本の諸地域

1 九州・沖縄地方(1)九州・沖縄の自然と特色
2 九州・沖縄地方(2)九州の農業と畜産
3 九州・沖縄地方(3)諫早湾の干拓
4 九州・沖縄地方(4)沖縄の歴史と米軍基地問題
5 中国・四国地方(1)平和都市・広島のまちづくり
6 中国・四国地方(2)豊かな瀬戸内地方
7 中国・四国地方(3)高知県の農業と第6次産業化
8 中国・四国地方(4)過疎地域の地域おこし
9 近畿地方(1)奈良・京都の伝統産業
10 近畿地方(2)広がる阪神工業地帯
11 近畿地方(3)琵琶湖の環境保全
12 近畿地方(4)木(紀伊)の国・和歌山県の林業
13 中部地方(1)東海地方の産業~静岡県
14 中部地方(2)自動車の町・豊田
15 中部地方(3)中央高地の高原野菜と果樹栽培
16 中部地方(4)北陸の豪雪地帯~新潟県
17 関東地方(1)東京にはいくつ顔がある?~首都・東京
18 関東地方(2)人口が集まりすぎると?~東京の都市問題
19 関東地方(3)利根川をさかのぼると~自然と歴史・農業
20 関東地方(4)東京湾から内陸へ~工業地帯の広がり
21 東北地方(1)東北地方の自然と農業
22 東北地方(2)東北地方の人口と社会の変化
23 東北地方(3)東北地方の公共交通
24 東北地方(4)炭鉱から観光へ
25 北海道地方(1)北海道の開拓とアイヌ民族の問題
26 北海道地方(2)十勝平野の畑作と根釧台地の酪農
27 北海道地方(3)北海道の漁業~とる漁業から育てる漁業へ
28 北海道地方(4)北海道農業とTPP

Ⅴ 世界的視野から見た日本

1 世界の人口問題
2 資源・エネルギーと原発問題
3 日本の農業・食料問題
4 日本の工業問題
発展学習 日本の原子力発電所と被ばく労働

世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明

歴史教育者協議会常任委員会は、現在国会でも議題にあがっている、世田谷区史編纂における「著作人格権の不行使」の問題に関して、自治体史における歴史学の成果の尊重、人権としての著作人格権の問題、歴史修正が起こりやすくなる前例となることへの危惧などの観点から、以下の声明に賛同いたします。

⇨声明文へはこちらから

(声明) 広島市教育委員会が平和教育の副教材から『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」を削除することに抗議し、その撤回を求めます

(声明)

広島市教育委員会が平和教育の副教材から『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」を削除することに抗議し、その撤回を求めます

 

広島市教育委員会は2023年2月8日「平和教育プログラムの改訂について(報告)」を出しました。その中で、副教材「ひろしま平和ノート」から漫画『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」(「ビキニ被ばく事件」)についての記述を削除しました。

『はだしのゲン』は広島で被爆した作者中沢啓治さんが、自らの体験をもとに原爆の実相を伝えた作品で、広島のみならず原爆の恐ろしさを世界に伝えてきました。「第五福竜丸事件」は1954年3月1日に静岡県焼津市のマグロ漁船の乗組員が米国の水爆実験によって被ばくした事件です。これをきっかけに原水爆禁止運動が広がり、1955年第1回原水爆禁止世界大会が広島で開催されました。それから現在まで8月6日・9日に広島・長崎で大会が開かれています。また、調査によって多くのマグロ漁船が被ばくしたことが明らかになりましたが、現在まで正式に被ばくが認められていません。また、実験地の人びとは、今も被ばく後遺症に苦しめられ、故郷に帰還できていません。

広島市教育委員会は平和教育プログラム改訂会議において該当学年の教材としての適否を見直して、『はだしのゲン』は「浪曲の場面は、児童の実態に合わない。鯉を盗む描写は児童に誤解を与える恐れがあり…教材として扱うことが難しい」、「第五福竜丸事件」は「被爆の実相を確実に継承する学習内容となっていない」としています。しかし、『はだしのゲン』をどの年代でどのように扱うか、「第五福竜丸事件」をどう扱うかは、学校・教員が児童・生徒の実情から検討すべきであり、教育委員会が教材の適否をし、排除することがあってはなりません。『はだしのゲン』は描写内容が問題視され、学校図書館での閲覧を制限する動きもありました。「第五福竜丸事件」についても、核開発や核抑止論の立場から核の歴史や放射能の危険性を学ぶことが障害となっていると考えざるを得ません。

私たち歴史教育者協議会は、平和教育を重視してきた被爆地広島が、『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」の教材を不適切として削除・排除することは極めて重大だと考えます。広島市は毎年8月6日に平和式典を開催し、原爆死没者の追悼とともに核兵器廃絶と世界平和の実現を願い「平和宣言」を世界に発信しています。今、ウクライナ戦争で核兵器使用の懸念も生まれ、国内では「核共有論」「非核三原則の見直し」の論議が始まっています。このように核使用が現実味を帯びてきた今、原爆・核兵器使用がどれほど悲惨であったかを学ぶことは重要であり、『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」は貴重な教材です。5月開催の「広島サミット」を前にして、人類初の戦争で原爆攻撃を受けた広島・長崎のある日本の政府が核兵器禁止条約に署名すること、核の実相を学びその廃絶につながる教育を重視する姿勢を示すことが求められています。今回の「ひろしま平和ノート」の改変は、私たちが積みあげてきた平和教育を根底から覆し、核兵器保持に転換しようとする国の政策が背景にあると危惧せざるをえません。

歴史教育者協議会は1949年の創立以来、戦争の実相をしっかりと伝え、次世代に戦争体験を継承する努力を積み重ねてきました。平和教材から『はだしのゲン』「第五福竜丸事件」を削除することに抗議し、その撤回を求めます。 

                          2023年3月26日

                         歴史教育者協議会 臨時社員総会

PDF版はこちら

 

皆で学んだ「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」 歴教協第41回中間研究集会報告(ハイブリッド)

 1月8日(日)に「ウクライナ侵攻をどうとらえるか」というテーマで、第41回中間研究集会をラパスホール
で実施しました。会場に42人、オンラインに71人の合計113人の参加があり、時宜にかなったテーマということ
もあり熱のこもった集会となりました。              
 

《講演について》
午前の講演では 山田朗さん(歴史教育者協議会委員長・明治大学)が「ウクライナ戦争と日中戦争、そして
現代日本の軍拡を考える―その類似性と危険性―」をテーマに日中戦争と比較してのウクライナ情勢と現代日本
における大軍拡と改憲の潮流について語ってくださいました。
前半の「類似性」では①1930年代の日本と現在のロシアはともに軍事大国であり侵略国、②「満州国」建国(1
931~32年)とクリミア併合(2014年)を「成功事例」と認識した、③一撃によって相手が降伏する、政権が崩壊
すると見た誤算、④長期戦化して一般市民の犠牲が拡大、⑤「戦争」と呼称せず、戦争の実態を国民に知らせな
い報道体制という5点をあげて言及しました。後半の「危険性」では①軍拡加速化、②新たな戦争、③残虐兵器使
用、④和平実現の困難性の4点について触れて、ウクライナ戦争は第3国(中立国・勢力)による和平仲介しか打
開の道はないと論じました。
「類似性」と「危険性」を指摘したうえで、今回の講演のヤマ場とも言うべき「現代日本における大軍拡と改憲
の潮流を許さない」ために現状をどのように分析、打開したらよいかの提言がありました。「台湾有事=日本有事」
論の喧伝により「防衛費増額賛成論」の増加、現実に2023年度防衛予算段階ですが1年で2兆円弱の増加の可能性
に触れ、中国との軍拡競争が「加速」する危険性を強調されました。同時に「スタンド・オフ防衛能力」は「敵基
地攻撃能力」へと転化、危険な新戦略の台頭も考えられると指摘されました。
 最後に、新しい安保3文書(国家安全保障戦略②国家防衛戦略③防衛力整備計画)の問題点を明らかにして、軍
拡・改憲の潮流を押し返すために?戦争の記憶の継承、②戦争の歴史と実態、軍拡の実態を知ること、③戦争に加
担しないという3点を力説、強調されました。

《報告について》
 午後は、午前の講演を受けて山本悦生さん(島根県歴教協、津和野町立津和野中学校)が「世界の”今”を授
業に―歴史学習の最後に取り上げたウクライナ侵攻―」、続けて中條克俊さん(歴教協副委員長、中央大学)が
「関東大震災/朝鮮人虐殺事件100年―関東大震災直後に何が起きたか」を報告してくださいました。
 山本さんは、2022年6月現在のウクライナ情勢から2時間構成の授業実践を報告しました。1時間目はロシア
のウクライナ侵攻の現状を確認して、2時間目は「ゼレンスキー大統領は2月24日の侵攻前に戻すまで抗戦すべ
きか、約20%を明け渡して停戦すべきか」という問いを提示して討論を深めることができたとのことでした。
 中條さんは、関東大震災100年にあたって9月1日は「防災の日」だけではなく「追悼の日」であることを忘れ
てはならないとして①朝鮮人虐殺事件②中国人虐殺事件③金子文子・朴烈事件④亀戸事件⑤福田村事件⑥大杉栄
虐殺事件(甘粕事件)を扱った授業実践について報告されました。

 講演、報告を受けて、会場並びにオンライン上での質疑応答がおこなわれ、テーマの重要性から実りある討議
ができ、兵庫大会への流れをつくることができました。

《アンケートから》
 アンケートには「時宜にかなった講師と報告者の人選でよかった」、「ウクライナをどうとらえるかというテ
ーマは、教員でなくとも参加しやすかった」、「市民の方の参加も多く、関心が高いことがわかった」、「ウク
ライナ情勢とあわせて関東大震災100年の報告もあってよかった」という声がありました。

1/10現在集計 よかった まずまずだった 不満だった
オンライン参加者 17人(85.0%) 3人(15.0%) 0人
会場参加者  6人(75.0%) 2人(25.0%) 0人
合計 23人(82.1%) 5人(17.9%) 0人