投稿者「温若杉」のアーカイブ

編集長日記(7)「明けまして、おめでとうございます」

編集長日記(7)「明けましておめでとうございます!

今年も『歴史地理教育』をよろしくお願い致します」

 〇ご無沙汰です!

昨年11月以来の投稿で、ご無沙汰をしてしまい、申し訳ありません。この間、11月増刊号の2019年の歴教協全国大会の埼玉大会の報告号、12月号の経済分野の特集「100兆円超えの向こうに」を続けて直接担当して刊行し、3月増刊号の「『平成』の30年・ポスト冷戦を問う」の企画と原稿依頼をしていました。年末の授業や校務と重なったのもあり、かなりのオーバーワークになってしまったようです。

〇日韓・日中の交流行事に参加してきました。

それでも、歴教協の会員としては研鑽を積みたく、11月30日に日韓・日中交流委員会主催の朝鮮の三一運動と中国の五四運動についてのシンポ、12月26日から3泊4日で29日までは日中交流委員会の中国の旅の南京旅行での授業交流にそれぞれ参加し、そして一昨日の1月12日に歴教協の中間研究集会で、日韓関係の歴史と現在、そしてオリンピックについての講演や報告を聞いてきました。どれもとても充実した学びの機会となりました。

〇11月30日の日韓・日中のシンポ、盛況でした。

このシンポは『歴史地理教育』の本年の3月号の特集で三一運動、五四運動をまとめて取り上げたことがきっかけとなり、それぞれの運動について日中韓で授業した教員が集まっての授業報告をしました。特集を企画した段階で、この2つの朝鮮・中国の運動は1919年の東アジアで日本に対するそれぞれの民族運動として、一体で考えるべきということが基本的な認識でした。ところが研究者への依頼段階では、これを研究として一体で論述できる研究者はいないと断られ、分けて依頼するしかありませんでした。歴史教育との大きなギャップを感じさせられたところです。

しかし、このことをシンポで質問すると、中国でも韓国でも、2つの運動に関連性を特に意識しておらず、それぞれ個別に韓国では三一運動、中国では五四運動を授業で取り上げているとのことでした。東アジアという視覚が共有されていないことを強く感じました。

〇一昨日の中間研も盛会でした!!

 南京の授業交流については、別に報告したいと思いますので、あとは昨日の日韓関係についての加藤圭木さんの講演について、述べておきます。加藤さんはまだ、30代の気鋭の研究者ですが、却って1から日韓関係についての近現代の歴史について、史料を踏まえて幅広く論じて頂き、改めて日本の植民地支配の不法性、戦後の補償問題の不充分な解決状況を明らかにして頂いて、いろいろ教えられることが多くありました。特に徴用工問題や「慰安婦」問題などは人権問題として考えるべきという論旨は説得あるものと感じ入りました。尚、この講演については、後日『歴史地理教育』に掲載予定です。(若杉温)

2020年1月号「オリンピックの光と影」の読みどころ

 2020年1月号は、今年の夏に東京を中心として行われるオリンピック・パラリンピックを特集しました。

 これまで、誘致をめぐる贈賄、施設建設のための森の伐採、選手のコンディションを考えない競技時間の設定など、誘致・開催時期・会場・施設・競技内容などをめぐっては、さまざまな問題点が指摘されてきました。また、「復興五輪」と言われているものの、実際の復興にはほど遠い現状があります。

 特集を通して、オリンピック憲章の理念と現実の課題をしっかり学びたいと思います。

編集長日記(6)、更新しました。ブログでご覧ください。

 編集長日記(6)、更新しました。今回は「東海ブロックで、長篠合戦の古戦場を見て来ました!!」と題して、先週の東海ブロックに参加して、見て来た長篠合戦の古戦場での見聞について、報告しています。百聞は一見に如かずの内容です。授業化のヒントにも言及しました。是非、ご一読ください。

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編集長日記(6)東海ブロックで、長篠合戦の古戦場を見て来ました!!

編集長日記(6)「東海ブロックで、長篠合戦の古戦場を見て来ました!!」

 先週、東海ブロックに参加して、愛知県新城市の長篠合戦の戦場跡のフィールドワークに行ってきました。歴教協ならではの愛知の県支部の企画で、長年地域調査を重ねられている地元の教員の方の詳細な説明を聞きながらの贅沢な見学でした。個人の見学では、交通の便だけでなく、こうした点で決定的に異なることを実感しました。来年の愛知大会の東海ブロックの広域のフィールドワークが俄然楽しみになって、大会への期待が高まりました。

最初に徳川・武田の攻防戦の舞台となった長篠城跡を訪ね、本丸周辺の堀跡から始まり、周囲の道筋、川筋を回り、山城としての堅固さを体感して、本丸跡に立つ長篠城跡史跡保存館を見学しました。この保存館には、鉄砲をはじめ数々の、長篠合戦関連の遺品が展示されています。中でも目を惹くのはやはり『長篠合戦図屏風』です。合戦場のジオラマもあって、どこで実際の戦闘があったのか、注目して見て来ました。

 その後、いよいよ古戦場である設楽原を訪ねました。現場には、有名な織田・徳川側の馬防柵が復元されていますが、もちろんこれは現代の復元です。しかし、そこから武田側を見ると、実際の戦争の様子がリアルに想像できました。武田の強力な騎馬隊に備え、馬防柵だけでなく、連吾川、土塁、空堀、そして田んぼが両軍の前に広がっていました。これでは武田側容易に織田・徳川軍にたどり着けず、火縄銃の一斉射撃の前に敗れ去りました。今まで通説だった火縄銃の三段打ちについて、相当な疑いが出されていますが、それが無くても、この戦場の状況なら大量の鉄砲さえあれば、織田・徳川側の勝利は間違いないことがわかります。季節も梅雨明け前後の6月末です。

馬防柵は2kmに渡り作られたそうですが、織田・徳川軍3万8千、武田軍1万5千の大会戦が起こった場所にしては極めて狭い範囲で、実際に見るととても全軍が入り切らない広さで、その点は中々信じられません。こうしたことも現場を見てこそわかることで、是非、

今後授業する際には、取り上げたいところです。

 最後は、設楽原歴史資料館を訪ね、大量の鉄砲などの展示品を見るとともに、屋上から長篠合戦の古戦場とその周辺の地域を展望しました。ここでは学芸員の方の合戦の背景、特に武田勝頼が、なぜ不利な戦いに敢えて信玄以来の重臣の反対を押し切って挑んだのか、というこの合戦最大の謎について、解説して頂きました。やはりもともと嫡男ではなく、武田の滅ぼした諏訪氏の血筋からたまたま武田家を継ぎ、父信玄と比較されて、功を焦ったことが判断を誤った原因とのことでした。そもそも畿内で一向一揆と死闘を演じる信長の参戦を予想していなかったのかも知れないとの説明もありました。

 戦場跡には武田の重臣の墓や両軍の戦死者をそれぞれまとめて供養した大塚・小塚という墓地もあり、今でも供養が続いていました。それらも今では地元の町おこしの観光資源となっていて、そこら中に宣伝の看板がありました。これも現地を見てわかる雰囲気でしょう。

 これまで『歴史地理教育』にこの長篠合戦を取り上げた授業実践が幾つか掲載されています。近年のものでは2016年4月号の大谷伸治氏の「小学校の授業6年 歴史学のおもしろさを伝える─信長が長篠の戦いに勝った理由を考えよう」です。これらの先行実践を参照しながら、やはり長篠合戦図屏風を教材にそれと実際の戦場跡で見聞したものを比較して、次回の実践に臨みたいと思います。屏風には三段打ちも描かれていませんし、設楽原戦場が大きく描かれていて、長篠城との距離が極端に狭くなっています。前線で鉄砲を構える兵士が鎧兜を着けていて、鉄砲足軽ではありません。馬防柵に守られて戦ったといいながら、その柵を出て戦っている者も屏風には描かれています。武田側も敵が柵の後ろにいては攻めてこなかったはずです。こうしたことも現場を見ると、絵画史料を批判的に見て、その真偽を考える授業の材料になります。

授業で是非これを取り上げたと思わせて頂いた今回の東海ブロックのフィールドワークでした。ご準備頂いた関係者の方々に深く感謝致します。(若杉温)

2019年12月号「100兆円超えのむこうに」の読みどころ

12月号・編集のねらい

 2019年、国の予算がついに100兆円を超えました。一方、財政赤字は1000兆円を超え、10月には消費税が10%に引き上げられました。財政の再配分機能は働かず、社会の格差は拡大する一方です。一体、誰のための財政なのか、その基本とあるべき姿を特集しました。

2019年11月増刊号「第71回歴教協全国大会・埼玉大会報告号」の読みどころ

11月増刊号全国大会の読みどころ

 第71回歴教協全国大会埼玉大会報告号が出来ました。草加市文化会館の全体会に始まり、獨協大学での分科会・「地域に学ぶ集い」、そして閉会集会、さらに埼玉中心に関東各地でのフィールドワークまで、大会全日程の内容を記録した貴重な一冊です。本年の歴教協の全国大会では、歴史教育、社会科教育などをめぐって、どのような議論が交わされたのか、その全容をお伝えします。

 

〇熱気あふれる全体会

 全体会は、最初に山田朗歴教協委員長による歴史修正主義の横行に警鐘を鳴らす基調提案に始まりました。そして、記念講演は、近年学校での組み体操などの危険性を訴えて、教育のリスク管理の問題を訴えて注目されている教育学者の内田良さんの「学校をカエル!-『教育』の病から脱け出すために」。さらに埼玉の中学校の井村花子さんの学年全体で取り組んだ平和・人権学習の地域実践報告、井村さんの中学の卒業生も交えてのシンポジュームでは、参加者全員によるグループワークから様々な質問・意見が出て、大会テーマの「ともに生きる、ともに歩む―対話からひらく未来」にふさわしい新基軸の内容となりました。11月増刊号の巻頭では、その熱気をお伝えします。

 

〇24を数える分科会

 分科会は24あり、それぞれの教室会場に分かれて、様々なテーマごとに、170を超える全国各地からレポートが報告されました。その報告の内容と議論を、全部まとめて掲載しました。2日間にわたる熱のこもった分科会での発表の様子を伝えます。特に注目される授業実践や地域報告などは、逐次『歴史地理教育』の通常号に掲載します。中には、既に大会に先駆けて掲載されたものも多くあります。また、11月増刊号にも小中高で各1本ずつ掲載しています。是非、ご一読ください。

 

〇地域に学ぶ集い・閉会集会、そしてフュールドワーク

 2日目の夜の「地域に学ぶ集い」は、埼玉地域に関わるものを中心に、学識豊かな報告者による歴史や社会などの諸問題についての報告、糸車などの教材紹介、そして本部企画の日中・日韓との交流事業など、多彩な内容の学習会です。これについては参加者の感想などの報告をまとめて掲載しました。通読すると、歴教協の地域での豊かな活動がよくわかります。

 閉会集会では、冒頭でシリアでの長期の拘束からようやく生還されたジャーナリストの安田純平さんが埼玉県出身ということもあって、ビデオメッセージで、シリアでのご自身の拘束をめぐっての、日本政府の唱える自己責任論の欺瞞について語ってくれました。その後、分科会での議論を踏まえて、教科書問題や新指導要領の問題性など現在の教育を取り巻く様々な問題をめぐって、ベテランから若者まで、幅広い参加者から発言がありました。そうした集会の総括も掲載しました。

 最後に、大会後のフィールドワークについても、コースごとに参加者の感想を、すべての訪問先について、具体的な説明と写真などと共に掲載しました。分科会の多彩さと共に、フィールドワークこそ全国大会の醍醐味と言われて、毎年参加する会員も多いと聞きます。地域に根ざした教育をめざす歴教協にふさわしい企画です。

 こうした埼玉大会の多彩な内容をまとめて詰め込んだ充実の1冊です。是非、ご購読をお勧めします。

編集長日記(5)「『鎖国』か『海禁』か?」

編集長日記(5)「『鎖国』か『海禁』か?」

 11月号は、「明の海禁政策と日本の『鎖国』」と題して、日本の近世の対外政策を東アジアの視点を踏まえて考える特集を組みました。「鎖国」の見直しについては、1997年の10月号以来、約20年ぶりの特集です。その表題は「新しい『鎖国』の見方・学び方」で、いわゆる「四つの口」の長崎・薩摩(琉球)・対馬・松前の4つの窓で、日本は外国とつながっていたという「鎖国」観の見直しが提起されています。今回も4つの窓ごとの論稿を並べましたが、「鎖国」概念を相対化するとして、注目される明の海禁との比較を打ち出すことで、新たな問題提起となっています。

 まず、お勧めは巻頭論文の木村直樹さんの「幕府の『鎖国』政策とその実態」です。とにかく“めちゃくしゃ”おもしろい論稿です。8pのものですが、大変わかりやすいので、“サクサク”読めます。何がおもしろいかというと、具体的な貿易品の流通の様子で、長崎中心に4つの窓の相互関係も含めて、「鎖国」体制の実態を語っているところです。モノのやり取りの様子が目に浮かぶように思えて、これは是非、授業化したいと教師に思わせてくれる魅力的な論稿です。

 今回の特集の目玉である明の海禁政策と「鎖国」との比較については、山崎岳さんから、「海禁とはなにかー中国史の立場から」という論稿を寄せられました。中国史の史料から、海禁という言葉を取り出し、その意味合いを厳格に検討している論文です。高度な内容ではありますが、“頑張って”読むと、安易に海禁と「鎖国」を同一視してはいけないことを強く印象づけられます。

 また、日本列島の南北の出入り口の琉球、蝦夷地については、麻生伸一さんの「近世日本の対外政策と琉球」と東俊佑さんの「アイヌの交易世界と松前藩」がそれぞれ、その実態を具体的に明らかにされています。これらの論稿をまとめて読んで頂けると、東アジアの中の近世日本の対外関係について、豊かな歴史像を得ることできると思います。

 実践では、対馬や倭寇を取り上げて、中世から近世に掛けての東アジアの中での日本の対外関係について授業した関誠さんの「対馬から見る中世東アジアの陸と海」という中学での実践を掲載しました。関誠さんは、東京都の公立中学校で教えられています。2016年の7月増刊号の『歴史の授業は子どもが主役』と題した小中高校の実践集で「荘園の授業」を寄稿して頂きました。その時の実践でも、今回のものでも、ともに生徒との対話を中心に授業を展開されている点が印象的で、追試をしてみたくなる優れた授業実践です。他の研究論文と合わせて、ご一読をお勧めします。

他にお勧めは、冒頭の1997年10月号「新しい『鎖国』の見方・学び方」2015年2月号の「悪党と倭寇」といった10月号と内容の関連するバックナバーと併読されることです。この20年での研究・実践の進展、中世と近世の日本の国際関係の変容がよく理解できると思います。(若杉温)

 

編集長日記(4)「日韓関係を『歴史地理教育』に学ぶ」

編集長日記(4)「日韓関係を『歴史地理教育』に学ぶ」

〇日韓歴史実践シンポに参加しました

先週は歴教協の日韓交流委員会主催の第18回日韓歴史教育実践シンポジウムに参加するため、韓国の蔚山・釜山に行ってきました。蔚山外国語高等学校で、日韓の教師による公開授業と授業報告がそれぞれ2つずつありました。その詳細は後日発行される報告書に譲りますが、日韓関係の難しい昨今、こうした交流が行われたことに、大きな意義を感じます。

 さて、この日韓関係に関する問題について、歴史的に考えるための論考を、最近の『歴史地理教育』から幾つか紹介したいと思います。 

 

〇中塚明インタビュー

 まず、最初のお勧めは、9月号の単発で掲載した中塚明さんのインタビュー「日韓の友好は、歴史の事実を見つめることから」です。中塚さんは日清戦争の研究で高名な歴史学者です。インタビューでは広く知られた、日清戦争のきっかけとなった日本軍の朝鮮王宮占拠に関する一次史料の発掘など、これまでのご研究について語って頂きました。特に近年は日清戦争に深く関係する東学農民戦争の遺跡を、現地韓国に訪ねる旅を主催されて、多くの参加者と共に韓国の人々との交流を続けてられています。この交流についてもインタビューでは詳しく語って頂きました。

 私もインタビューに同席させて頂きましたので、この機会にと思い、授業で生徒に聞かれて前々から気になっていた、「なぜ征韓論以来近代日本は、朝鮮・韓国を侵略し続けたのか?」という問題について、お聞きしました。この質問をしたのは、一般にいわれる植民地に求められる市場や資源という答えでは、明治初期の日本の資本主義未発達の状況を考えると、答えにならないと生徒の納得が得られなかったからです。米の供給地とか、山県有朋の国家の利益線の確保など、幾つかの想定をしたのですが、中塚さんの答えは別のところにありました。その詳細は『歴史地理教育』9月号に譲りますが、かなり意外なものでした。

 

〇「慰安婦」問題をめぐって

 最近、愛知トリエンナーレの表現の不自由展でも話題になった「従軍慰安婦」問題については、大阪市の公立中学で精力的に授業実践をされている平井美津子さんが、最新の『歴史地理教育』10月号「ジェンダー平等、女性の権利拡大」と題した短文で、言及されています。明快な論旨で、この問題の本質を指摘されています。また、来月の11月号では、「性暴力を授業する」との題で、連載「高校生と考えた憲法・平和の授業」の⑧で、長年高校の教員をされ、現在は大学で教職課程の大学生を教えている北海道の山本政俊さんが「平和の少女像」を教材に実践された授業を紹介されています。高校生の関心に寄り添って難しい戦争加害の問題を取り上げた秀逸の授業です。

 

〇三・一運動をめぐって

 そして、時宜にかなったテーマで話題となった、今年3月号の特集「三・一独立運動、五・四運動一〇〇年と日本」の巻頭論文の「三・一運動一〇〇年から何を学ぶか」(加藤圭木さん)をはじめ、韓国教師の授業報告「韓国の子どもたちは三・一運動をどう学んだか」(朴範羲さん・翻訳は永島梓さん)、そして、同じ号の「中学校の授業 歴史 中学生と学んだ三・一運動」(小林優香さん)も、それぞれ学ぶことの多い論考と授業実践の紹介です。加藤圭木さんは、来年初春の歴教協の中間研究集会での講演が予定されています。また小林優香さんは、冒頭で触れた蔚山でのシンポで韓国の高校生を相手に、同じ三・一独立運動について授業されました。それぞれ、ご一読を皆さんにお勧めします。

                                   (若杉 温)